『最愛』大輝にとっての一番重要な真実がそこに “事件”が描かれた第1話を熟考する

『最愛』“あの夜”が描かれた第1話を熟考

 衝撃の言葉に耳を疑った。『最愛』(TBS系)第9話で藤井(岡山天音)が大輝(松下洸平)に放ったのは「15年前、あの台風の夜。本当は事件の現場におりましたよね?」という問いだった。

 最終話を目前に、大どんでん返しを予感させるこの言葉に視聴者も騒然。事件を追う立場であった大輝にまで疑惑の目が注がれる。これまで一途に最愛の相手を慕い続け、梨央(吉高由里子)と優(高橋文哉)を支えてきた大輝だけに、犯人であってほしくないという願いが心を渦巻く。今回は、そんな大輝の疑惑を少しでも晴らすべく、第1話で中心に描かれたあの夜の出来事を振り返りたいと思う。

 “15年前の台風の夜”とは、大学院生の渡辺康介(朝井大智)が殺され埋められた“9月21日夜から9月22日未明”のことだ。その晩、姉を庇った幼い朝宮優(柊木陽太)にペグで腹部を刺された康介は死亡し、遺体は達雄(光石研)によって山中に埋められた。藤井の言葉が本当なら、必然的に大輝もこの事件に関わっていることになるだろう。

 では当時、大輝は何をしていたのだろうか。“9月21日”の大輝は、陸上部の打ち上げに参加せずに達雄の車で姉の結婚式に出席するために駅に向かっていた。次に行動が明らかになるのは“9月23日”で、推薦試験を終了した梨央の携帯に大輝から写真付きのメールが届いたことから、大輝がこの日、姉の結婚式に参列したことが伺える。

 続いて、車で駅へ向かってから結婚式参列までの空白の時間を考えてみたい。大輝が仮に“9月21日”の夜に駅から引き返し、何らかの形で事件に関わっていたとしたらどうだろうか。大量の血や泥がついた衣服のままでは寮に帰ることも、大阪に出ることも不可能だろう。達雄が泥だらけで帰ってきたのは、直前に梨央が目覚まし時計で確認した時間で朝方の4時12分以降であることがわかる。大輝が達雄を手伝っていたとしたら、ふたりが遺体を埋め終わったこの時間には辺りは徐々に明るくなりはじめ、大量の泥や血痕を付けたままウロウロするには難しい時間帯だろう。達雄は家の洗濯機や風呂を使って証拠を洗い流すことができたが、大輝は寮で集団生活をしている以上、証拠を隠滅するのは難しいのではないかと感じる。

 さらにふたりの大切なお守りにも言及したい。元々は梨央が陸上部の受験生たちに贈った白いお守りだが、大輝は梨央の受験前に合格を祈願して自分の分を梨央に持たせている。梨央は“9月21日”の晩にズボンのポケットからそのお守りを取り出し、中にあるノートの切れ端を見つけることに。そこには大輝が自ら書いた「必勝合格! 百戦百勝!」の文字が記されていた。このお守りはその後15年の時を経て白骨死体とともに発見されるが、なぜそこにあったのかは分かっていない。達雄が康介の遺体と衣服を別々の場所に埋めたことは既に明らかになっていることから、もし康介がお守りを盗んで所持していたのなら衣服の方から発見されるべきだったろう。梨央がお守りを持っていたことを知る達雄と大輝が誤って遺体の場所に落とすということも考え難い。なぜならこのふたりは疑いの目が梨央に向くようなことには細心の注意を払う人物だからだ。

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