赤楚衛二が放った恐ろしいほどの“怒り” 『SUPER RICH』優に重々しくのしかかる重圧

赤楚衛二が体現した、恐ろしいほどの“怒り”

 その一方で、衛にとっての春野家は、やっとできた大切な家族でもあるわけで、優の配慮のない暴言をいさめる場面も。第1話で何度か繰り返された「経営は情に流されるな」という伏線がここで効いてきたと感じる描写であった。さらに優に対する、「スキルはないが人に甘えるのが得意」という視点も大きく変化する。今やCOOとして会社を背負い、不利益に対して敏感になっていることに加え、情けない思いをしたくないというプライドも感じられた。それは衛に対してだけでなく、業務に関してもうかがえる。優が成長した証である一方、優の“良さ”として描かれてきた部分が損なわれていく姿には何処か寂しさも感じた。両親の目前に金の入った封筒を叩きつけ、ワッと泣いた母親に対する嫌悪と悔しさの溢れた赤楚衛二の芝居には、親、そして自身への、恐ろしいほどの“怒り”が表現されていた。この一瞬の表情に、第9話で優が向き合ってきたものの全てが凝縮されていただろう。視聴者もまた、抱えきれない悔しさともどかしさを感じながら、様々な問題が収束に向かうことを願うばかりだ。

 さらにラストで衛が「腹割って話そうか」と言っただけあって、これまで衛と優が目を背けてきたことはまだ山積みである。特に夫婦関係において健康や将来のプランに関してはもっと早い段階で話し合うべきだったように感じた。もはや後戻りできないほど優が追い詰められている今、衛との未来を心から真剣に考え、最良の決断ができるのか不安が募る。ふたりがソファで体調のことを話した夜、衛の握る手からするりと抜けていく優の手からは、結ばれていた絆が緩やかに解けていく恐怖を感じた。

 最終回に向けて凄まじい勢いで物語を展開する『SUPER RICH』。もはやどんな終着駅に運ばれるかもわからないまま、ジェットコースターストーリーは止まるところを知らない。

■放送情報
木曜劇場『SUPER RICH』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:江口のりこ、赤楚衛二、町田啓太、菅野莉央、板垣瑞生、嘉島 陸、野々村はなの、茅島みずき、矢本悠馬、志田未来、中村ゆり、戸次重幸、美保純、古田新太、松嶋菜々子
脚本:溝井英一デービス
プロデュース:金城綾香、栗原彩乃
演出:三橋利行、平野眞、相沢秀幸、阿部雅和
制作・著作:フジテレビ 第一制作部
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/SUPERRICH
公式Twitter:@super_rich_cx
公式Instagram:@super_rich_cx

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