『ヴェノム』、日本でも前作を上回るスタート 第三勢力「SSU」の展望と野望

『ヴェノム』、日本でも前作を上回るスタート

 先週末の動員ランキングは『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が土日2日間で動員30万2443人、興収4億5560万円をあげて初登場1位となった。初日から3日間の累計は動員41万5583人、興収6億2389万2560円。この数字は2018年に公開された前作『ヴェノム』の約105%という成績。前作『ヴェノム』の日本での最終興収は、例えばMCUだと『ブラックパンサー』や『キャプテン・マーベル』、DCだと『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や『ワンダーウーマン』あたりをも上回る21.9億円という数字。最終的に今作がこの数字を上回るかどうかは微妙なところだが、本国公開から2ヶ月遅れという悪条件も跳ね除けて、相変わらずの『ヴェノム』人気を証明したかたちだ。

 日本以外のほとんどの国で10月に公開された『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の興行は世界的にも絶好調で、北米をはじめとする各国で(公開タイミングにおいて)パンデミック以降の最高オープニング成績を記録。また、作品への評価の広がりも近年のスーパーヒーロー(ヴェノムは一応ヴィランだが)映画とは違った様相をみせていて、例えばポール・トーマス・アンダーソンのような監督まで作品に好意的なコメントを残している。その要因の一つには、近年2時間半超えも当たり前、映画会社がせっかく短くしても監督がその何倍もの長さのディレクターズ・カットを出したりと、重厚長大化の歯止めがきかないスーパーヒーロー映画(しかも、スーパーヒーロー映画ファンダムにおいてそれは概ね支持されている)にあって、97分という上映時間の潔さもあるのではないか。いずれにせよ、『ヴェノム』はシリーズ2作目にしてすっかり「スーパーヒーロー映画内オルタナティブ」のポジションを確立したと言えるだろう。

 プロデューサーのエイミー・パスカルは現時点で明言は避けているものの、今作の大成功を受けて『ヴェノム』3作目の企画も進行中(https://collider.com/venom-3-update-amy-pascal-spider-man-no-way-home-comments/)。来年早々にはジャレッド・レト主演、ダニエル・エスピノーサ監督の『モービウス』(2022年1月22日に全米公開。本来は『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の前の公開予定だったが、パンデミックによって公開順が入れ替わった。なお、日本公開日は未発表だが間違いなくまた大幅に遅れるだろう)、再来年にはアーロン・テイラー=ジョンソン主演、J・C・チャンダー監督の『Kraven the Hunter』の公開も控えていて、ここにきて俄に存在感が増しているソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(正式略称SSU)。つい先日も、SSU関連作である『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編『SPIDER-MAN: ACROSS THE SPIDER-VERSE』のファーストルック映像が、パート1とパート2の二部作となることと合わせて発表されたばかりだ。

 一方、同じソニー配給によるMCU作品、トム・ホランド主演の『スパイダーマン』シリーズも、来週公開(日本は除く)の『ノー・ウェイ・ホーム』に続く新3部作の可能性が探られているという(https://deadline.com/2021/11/spider-man-trilogy-sony-marvel-amy-pascal-1234881396/)。MCUの『スパイダーマン』シリーズに関しては以前も散々すったもんだがあったように、ソニーの都合だけで決められることではないわけだが、ディズニーの意向に一方的に振り回されている感が強かった数年前と比べて、ソニーの発言力が増してきているのが伝わってくる。

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