『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』海外で賛否両論のワケは“愛”にあり?

『ヴェノム』続編、海外で賛否両論のワケ

 ソニー・ピクチャーズ配給の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が12月3日から日本で公開される。北米では10月1日に公開され、批評サイトRotten Tomatoesによると、批評家からの好意的なレビューは前作の30%から59%、一般観客のスコアは81%から84%と総じて上向き。だが批評内容を見ると賛否両論となっている。その一部を紹介しよう。

 ヴェノムは、主人公の記者エディ・ブロック(トム・ハーディ)に地球外生命体シンビオートが寄生して誕生したマーベル史上最も残虐なダークヒーローであり、スパイダーマンの宿敵として知られる。2018年に公開された前作『ヴェノム』は、ハーディ扮するエディと残虐だが愛嬌あるヴェノムとのコミカルな掛け合いが注目され、全世界興行収入は940億円を越える大ヒットを記録。今作は『モーグリ:ジャングルの伝説』のアンディ・サーキスが監督を務め、連続殺人犯クレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)がシンビオートを取り込み、覚醒した凶悪なカーネイジとの対決を描く。

 多くの海外メディアは、今作も引き続き2人のドタバタなコメディ路線を踏襲しており、前作が好きなら気に入るだろうと述べる。しかし今回注目すべきは、2人の「愛」に言及する批評が目立つことだ。

 Independentは「血と汗と脳汁で書かれたラブストーリー」とし、Polygonは「2人の奇妙な関係はこれまでのヒーロー映画にはなく、人間とシンビオートの親密さは魅力的でロマンチック」と評した。前作同様に互いの意向がぶつかり、エディの身体を経由する派手なケンカが見られるそうだが、今作ではその奇妙な絆に注目されているのが印象的だ。Vox評者は、ヒーローが犠牲を払って人々を助ける多くの映画とは異なり、彼らの親交は希望に満ちており、互いを補完してより強く幸せになれると指摘した。「心からの友ーーそれが恋愛であろうとプラトニックであろうと寄生したエイリアンであろうとーーを見つけることはこの世でもっとも重要だ」と肯定する。

 このように映画の骨子は、エディとヴェノムがドタバタや敵との戦いを経てさらに絆を深める点にあると言えそうだ。ゆえに凝った脚本や攻めた表現を期待する者からは、あまり評価されていない。Irish timesは「Tiktok世代の子ども向け映画」と書き、Varietyは「80年代の凸凹コンビのバディムービーと、ジム・キャリーの『マスク』を足して2で割ったよう」と評するように、複数メディアは、ファンたちによるエディとヴェノムの親密さを表す造語「Symbrock」に眉をひそめており、今回強まったロマコメ的展開に呆れている。身体を分かちあうエディとヴェノムの奇妙な絆が話のキモである点をどのように捉えるかで評価が二分されていると言える。

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