『あなたに似た人』静かに迎えた最終回 執着した物を失った“似たもの同士”の4人の結末

『あなたに似た人』静かに迎えた最終回

 Netflix配信中の韓国ドラマ『あなたに似た人』は嵐が過ぎ去った後、静かに最終回を迎えた。ク・へウォン(シン・ヒョンビン)が復讐のためにどれだけ攻撃しても壊れることのなかったチョン・ヒジュ(コ・ヒョンジュ)をひざまづかせたのは、彼女への執着を愛だと疑わないソ・ウジェ(キム・ジェヨン)だった。 

 ウジェをストーカーのように仕立て、ドライブレコーダーを利用して彼から離れようとしたヒジュの行動により、ウジェの暴走を一気に加速させてしまうことになる。ヒジュの手には追えず、行き着く先はへウォンのところしかなかった。結局、深い恨みや憎しみを抱えていたへウォンはヒジュに対して何も成し遂げることができず、皮肉なことにウジェの愛がヒジュを動かすことになる。つまり、ヒジュを破滅させるキーワードは「ウジェ」だった、ということだ。そこで、自分が愛されていない事実をことごとく見せつけらたウジェに、追い討ちをかけたへウォン。ヒジュが自分の元に訪れてきたことで、ヒジュを地獄に落とすことができるのはウジェであり、このタイミングで彼に火をつければ、彼女を追い詰める決定的な事件を起こすに違いないと確信したのだろう。ヒジュの家の前までウジェの後をついて行ったのは、ヒジュが破滅していくのを見届けるためである。

 そこで、思いも寄らない事件が起きた。ウジェに襲われるヒジュの姿を目撃したヒジュの娘アン・リサ(キム・スアン)がウジェの首に万年筆を刺したことで、ウジェが死に至ってしまったのだ。ヒジュが誰かを殺して死体を遺棄したと思われた第1話の冒頭のシーンは、リサがウジェを殺してしまったことを隠すために、ヒジュが湖に彼の死体を沈めたという予想外の展開だった。もし、自分がウジェを殺したなら、本人が言うように監視カメラの映像などを利用して正当防衛と主張し、“何もなかったこと”にするのがチョン・ヒジュだ。しかし、ウジェを殺めてしまったのは娘のリサである。しかも、本人はすぐに現場から逃げ出してしまったため、ウジェが死んでしまったことを知らない。自分の大切なものを守るために“何もなかったこと”にするのもまたヒジュなのだ。

 ところが、へウォンに事件の真相を知られてしまったことで、ヒジュは今までしてきた過ちを認め、彼女に初めての謝罪をする。へウォンとウジェに申し訳ない気持ちというより、リサのためを思っての行動だろう。欲望のままに生きてきたヒジュの執念深さを、ここでも見せつけられる。それでもへウォンが口外しようとしなかったのは、ヒジュが家族も地位も何もかもを手放して永遠に檻の中に入ると誓ったからだ。それに、人生を奪われた自分と同じ立場になる瞬間をやっと迎えられたのだから。

 復讐に囚われていた者も、過去に間違いを犯してしまった者もそれそれが前に進んだことで静かで穏やかな時間が流れていたが、義姉のアン・ミンソ(チャン・ヘジン)だけは違っていた。ヒジュと揉み合って建物から転落した夫のイ・ヒョンギ(ホン・ソジュン)が完全に回復できないと見込んだミンソは、自らが執刀し“生き地獄”を与える選択をしたのだ。右半身麻痺で言語能力の回復が困難な状況では、以前のようにミンソを威圧したり暴力を振るうことは二度とできない。病院の経営者という望まない道を歩まなければならなくなったが、それもわかった上での選択だったのだろう。得るのもがあれば失うものがあり、誰かの復讐が終わったところで、また誰かの復讐が始まるのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる