『ラジハII』田中役の八嶋智人に与えられた大きな役割 物語はいよいよ大詰めへ
シーズン1のラストで唯織(窪田正孝)の後釜としてラジエーションハウスに加わり、やがて他のメンバーが離散していくなかでも小野寺(遠藤憲一)と裕乃(広瀬アリス)とともに甘春病院に残り続けていた田中(八嶋智人)。11月29日に放送された『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』第9話は、すっかりこの空間に打ち解けているイメージのある田中というキャラクターについて改めて掘り下げ直し、他のメンバーとの間にあったある種の壁を取り払っていく。
“福男”という名前でありながら、これまで不幸なことばかり続いていた田中。ある時ラジエーションハウスにやってきた医療メーカーの営業マン・山田福造(石井正則)と出会い、共通点の多さから意気投合する。仕事によるストレスを感じて左耳が聞こえづらいという山田は、父親から実家の寿司屋を継いでほしいと言われており、それに冗談半分で誘われた田中はやる気をみなぎらせる。唯織の提案でMRI検査を受けた山田だったが、聴覚に影響しそうな異常が見受けられない。そんななか、田中の元妻・幸子(猫背椿)の再婚相手が検査に訪れるのである。
ラジエーションハウスのメンバーそれぞれにフォーカスを当てたストーリーというのはこれまでのエピソードで展開してきたわけだが、シーズン2も終盤に差し掛かったこのタイミングであえて新参者である田中にその順番が回ってくる。名前に“福”とありながらもちっとも福が来ない男の話という、ばんばひろふみの名曲「SACHIKO」を思わせるような皮肉めいた今回のエピソードは、軒下(浜野健太)のライバルというポジショニング以外のものを彼に与える以上に、ドラマ全体に大きな意味をもたらすように思える。それはつまり、ラジエーションハウス全員による強固な連帯を再び完成させるといったところだ。
「小さくて取るに足らない存在に思えても、必ず意味はある」。山田の難聴の原因が耳小骨の骨折であることがわかった際に唯織がつぶやくこの台詞。聴覚の機能を構成する3つの小さな骨である耳小骨(アブミ骨、キヌタ骨、ツチ骨)は、鼓膜の振動を内耳へと伝える役割を果たしており、その3つのうちひとつでも欠けたら音は聞こえなくなってしまう。放射線科医と放射線技師、そしてそれを支える医療メーカーの三者によって、このラジエーションハウスが構成されているのだと、そこで形容されるのである。