『アバランチ』大山の反撃に羽生たちの判断は? ヒール役・渡部篤郎の怪演光る

『アバランチ』渡部篤郎の怪演光る

 忘れていた。いつの時代も戦争は権力が起こすということを。真実も嘘も飲み込んでしまう圧倒的な暴力の予感が画面の端々から伝わってきた。

 『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)第7話のサブタイトルは「戦争」。第一部で起こした雪崩に続いて、仮面をはぎとった第二部ではより直接的な衝突が繰り広げられた。羽生(綾野剛)が全国に指名手配され、大山(渡部篤郎)のアバランチに対する反撃がはじまる。そんな中、羽生はかつての上司で刑事部長の戸倉(手塚とおる)と会う。3年前の偽装テロについて尋ねる羽生に戸倉は銃を向ける。そこに銃声が鳴り響く。銃弾は戸倉の胸を貫通した。

 戸倉を撃ったのは大山が手配したスナイパーだった。戸倉は「11月29日。それで全部終わる」と言い残して息絶える。戸倉が消されたのは口封じのためだった。万が一にも戸倉からアバランチに情報が洩れることがあってはならない。自身の足跡を完璧に消す大山の用意周到さと味方も平気で切り捨てる冷酷さに震えた。大山は極東リサーチの貝原(木幡竜)に命じて、アバランチのフェイク動画を拡散させる。「これからはもう国民に判断を委ねず、我々の手で雪崩を起こす」。仮面を着けて権力の中枢に潜む巨悪に天誅をくだすと語る姿は、注意して見なければ偽物だとは気づかない。動画の最後に映し出された「1129」。大山の目的は日本版のCIAを設立することで、国民の危機感をあおるために意図的にテロを起こそうとしていた。

 アバランチを支持していた人たちは、大山の狙い通り、手の平を返すようにアバランチをテロリストであると騒ぎ始めた。これまでにも法の枠外から既存の秩序を反転してきたアバランチだが、一歩間違えるとテロリストと取られかねない危うさもあった。人々の手に判断を委ねるか、決断主義で手を下すかでアバランチと大山のスタンスは明確に異なるのだが、それらを些細なこととして巧妙にすり替え、本質から目を逸らすのが権力の常套手段だ。自らの野望のためにアバランチさえも利用しようとする大山と、あえてその誘いに乗ろうとする羽生たち。互いの裏をかく駆け引きから前哨戦は始まっていた。

 戦争というと一般的に体術メインの接近戦やガンアクション、爆発シーンが思い浮かぶ。実力行使の前の段階でこれほどまでに動きのあるスリリングな映像体験ができるとは予想していなかった。目まぐるしく状況が推移し、定められたタイムリミットに向けて関係者が意図をもって一斉に動き出す。その軌跡を余すところなく映し出していた。情報戦と一言で済ませた時に捨て去られてしまう個々のクオリティを拾い上げ、時間軸に沿って編み上げていた。

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