アレック・ボールドウィン撮影事故の続報と詳細 ブランドン・リーのケースとの違いは?

ブランドン・リー死亡事故との相違点

 映画撮影現場での小道具の銃による死亡事故といえば、1993年のブランドン・リーの1件が思い出される。ブルース・リーの息子であり、アクション俳優として活躍していた彼は、映画『クロウ/飛翔伝説』の撮影中、小道具の銃の誤射により28歳で死亡した。28年前のこの事故と、今回の事故の違いについて比較してみよう。

 まずリーの事故が起こったのは、本番撮影中の出来事だった。銃撃犯役の俳優は、小道具の銃には閃光や発射音だけが出る空包が入っていると知らされていたが、なんらかの手違いで撮影用のダミー弾の残留物があり、それを腹部に受けたリーは死亡した。一方、今回の事故が起こったのはリハーサル中。本番ではリアリティを出すため本物、あるいはそれに近い銃を使用する場合があるが、リハーサルでは空包すら入れることができないレプリカを使うべきだともされている。また本件の捜査はまだ続いているが、実弾が発射された可能性もあるという。映画の撮影現場で実弾を使わないのは、もっとも基本的なルールだ。20年以上前の事故では、このルールは守られていたのに悲劇は起きた。ブランドンの妹シャノンによれば、彼女の兄が亡くなった事故でもすべてのルールが守られていたわけではないというが、彼の犠牲のあと、銃の管理に関するルールはさらに厳格化された。しかしどんなに厳しいルールがあっても、それが守られなければ意味がない。

 今回の事故を受けて、SNSでは多くの業界関係者が撮影現場から本物の銃をなくすべきだと主張している。リーの遺族もそれに賛成だと米The Hollywood Reporterに語った。「今のテクノロジーであれば、本物の銃やなにかを発射することのできる小道具の銃を使わなくても、特殊効果で表現することができるはずです。銃は必要ありません。業界全体がそういった方向に変化していくことをぜひ見てみたいです」。また今回の事故にもシャノンは胸を痛めているそうで「私と兄のフィアンセは、このことについてずっと話してきました。28年前にも、もっとこの件(撮影現場から銃をなくすこと)について提案していればと思いますが、今からでもぜひ取り組んでいきたいです」としている。

 事故で亡くなったハリナ・ハッチンスは、2019年にはアメリカの撮影技術者専門誌に“ライジング・スター”として紹介されていた。将来を期待されていた彼女に起こった悲劇に、胸を痛めている人は多い。この犠牲を無駄にしないためにも、ハリウッドは変わっていかなければならない。

参考

Jensen Ackles Pays Tribute to ‘Rust’ Cinematographer Halyna Hutchins: ‘She Was an Inspiration’
Brandon Lee’s Family Supports Banning Real Guns From Sets Following ‘Rust’ Fatal Shooting
'Rust' director told authorities Alec Baldwin was practicing drawing his gun when weapon discharged
Guns, Ammo, Accountability: Hollywood Munitions Experts Grapple With ‘Rust’ Tragedy
Prop Gun That Killed Cinematographer on Alec Baldwin Film Contained ‘Live Single Round,’ Union Claims

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