MCU空前の賛否両論?  『エターナルズ』の野心は実ったか、海外レビューが続々公開

『エターナルズ』海外レビューを一挙紹介

 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作、映画『エターナルズ』のレビューが海外メディアにて掲載された。かねてより「MCU史上最大の野心作」だと言われてきた本作だけあって、その反応はさまざま。今回は、海外での評価をほんの少しだけ覗いてみることにしよう。

 『エターナルズ』はアベンジャーズの誕生よりもはるか昔から人類を見守ってきた、“10人の守護者たち”の物語。何世紀もの間、人知れず地球に存在していた彼らは、世界各地に散らばって静かに暮らしているという設定だ。監督・脚本は『ノマドランド』(2020年)のクロエ・ジャオが務めた。

 まず最大の論点は、「この映画は革新的か、そうでないか」ということになるだろう。たとえば、Den of Geekは「従来のマーベル映画とは違う」と書き、USA Todayは「野心的かつ美しい、あらゆる意味でアンチ・マーベル的な作品」と記した。また、GamesRadarは「MCUの進化において必要なパンチを食らわせた」一本だと表現している。

 ところが、Varietyは本作を「スタンダードに思える映画」だと評したほか、Polygonは「新しいことを試みつつも、結局はお馴染みの枠組みに収める必要があることに脅かされている」と指摘した。話がややこしいのは、これらは双方ともに褒め言葉であり、また批判でもあるということだ。

 たとえばVarietyの場合、ジャオ監督が大作映画でも自分のスタイルを貫けるかどうかを懸念していた。そして実際のところ、ドキュメンタリー調のリアルな撮影や、明確な指針をもってイメージを重ねていく詩的さなどは「本作にはまったくなかった」と記している。それゆえ、同紙の評者にはスタンダードなスーパーヒーロー映画に見えたというのだ。ただし、スタイルを封印しながらも自身の感性をにじませた映画づくりには「観るべき価値がある」として、「枠組みを活かし、確固たるドラマと構造を作り上げた」とジャオを称えた。

 一方、本作の野心を評価したようにも思えたDen of Geekは、「『エターナルズ』はMCUを新たな方向に導こうとした」と書いた直後に「たとえそれがうまくいっていないとしてもだ」と付け加えている。結局のところ、ここで明らかになるのは、この映画が評者の目から野心的に見えたかどうかは作品の評価とはまったく関係がないということである。

 『エターナルズ』を手放しに絶賛していないメディアの多くに共通するのは、いささか脚本に要素を詰め込みすぎたのではないかという指摘だ。映画冒頭から新たに語られる設定、数千年もの時間を何度も行き来する物語、10人の登場人物、彼らの関係性が織り上げるサブプロットの数々について、Polygonは「シンプルにまとまりがない」と評し、The Guardianは「それ以前の作品なしに『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)を観ているよう」だと書いている。

 しかしながら、この件についてさえ評価は一枚岩ではない。Insiderは「前半に用意された伏線の数々はラスト30分で回収される。それらはもっと早いタイミングでも良かったのかもしれないけれど」として、情報をばらまくだけばらまいた脚本が、あくまでも作り手の狙い通りであることも示唆したのだ。

 とにかく本作については、ありとあらゆる面で評者の意見が分かれている。人物の内面を掘り下げ、アクションよりも人間ドラマに焦点を当てる作劇を評価する者がいれば、それも脚本がまとまりを欠いた一因だと見る者もいる。エターナルズが自らの信念や倫理を自問する主題についても、見るべきテーマだという考え方と、世界観の中で扱いきれていないという考え方が対立した。MCUで初めてラブシーンが登場することでさえ、好意的な反応がある一方、「子供には受けない」「必要ない」との批判も見受けられる。

 まさに賛否両論まっぷたつ……という状況ではあるが、いくつかの点では共通して賛辞が寄せられている。特にジャオ監督がこだわったロケ撮影は功を奏したようで、GamesRadarは「ジャック・カービーによるコミックの無限のイマジネーションと、自然主義的なクロエ・ジャオのスタイルが融合し、壮大かつ野心的、かつ根底に切実さのこもった映画を生み、そして実存の不安定性をめぐるテーマを呼び起こした」と絶賛した。

 また、Empireも「ジャオは自分の映像スタイルと彼女らしさを取り入れる余地を見出している」としたほか、IndieWireも「自然光のもと撮影された映像は彩度の低い深刻なトーン。台詞は大げさな音楽なしに語られ、エターナルズの面々はリアルな人物として描かれている」と記して、ジャオのアプローチを評価している。

 最後にはなってしまったものの、「リアルな人物」だと表現されたエターナルズの造形に貢献したのは、まぎれもなく充実の豪華キャスト陣だ。なにしろ、Den of Geekは「俳優陣による見事な演技が作品の最良の部分を形づくっている」とさえ記しているのである。

 出演者はアンジェリーナ・ジョリー、ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、クメイル・ナンジアニ、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ローレン・リドロフ、バリー・コーガン、キット・ハリントン、サルマ・ハエックら。現実社会を反映する多様性豊かなキャスティングだが、Deadlineは「現実のキャスティングがまったく気にならない」として、誰もが映画の中に自然な形で馴染んでいることを強調した。

 果たして『エターナルズ』の野心はうまく結実したのか、それとも失敗に終わったのか。その結果は、世界中の観客によってまもなく判断されることになるだろう。『エターナルズ』は2021年11月5日に劇場公開。

参照

Marvel’s Eternals dreams big and falls hard
Eternals review – magic hour meets PowerPoint in Chloe Zhao’s Marvel yarn
Eternals Review
‘Eternals’ Review: The MCU Confronts God Itself in Chloé Zhao’s Huge but Overly Familiar Superhero Epic
Eternals Review: Chloé Zhao Makes a Marvel Movie Like No Other
‘Eternals’ Review: Chloé Zhao’s Marvel Movie Is Finely Crafted but Needed More of Her Personality to Be Marvelous
Eternals Review
'Eternals' expands the Marvel universe with a messy, history-spanning origin saga
Review: Marvel's overstuffed 'Eternals' is a star-studded exercise in superhero excess
ETERNALS REVIEW: "GIVES THE MCU THE KICK IN THE PANTS IT NEEDS"
‘Eternals’ Review: Marvel’s Latest Superhero Team Takes On Refreshing New Directions For The MCU Thanks To Oscar Winner Chloe Zhao
'Eternals' is Marvel's weakest film in years, but at least it finally gets LGBTQ+ representation right

■公開情報
『エターナルズ』
11月5日(金) 全国公開
監督:クロエ・ジャオ
出演:ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー、サルマ・ハエック、マ・ドンソク、キット・ハリントン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021

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