古田新太、松坂桃李の苦しみの先に待つものとは? 『空白』が描く本当に失うこと

古田新太、松坂桃李の苦しみの先に待つもの

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、最近、1日でスーパーを7軒ハシゴした大和田が、映画『空白』をオススメします。

『空白』

 松坂桃李さんが、桃地こと愛らしいスーパーの店員役を好演していた『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)から約3カ月、再び松坂さんがスーパーの店員(店長)役を演じる『空白』が公開中です。本作では、亡くなった父親が経営していた店を引き継ぐことになった、どこか無気力さも感じる青年・青柳直人を演じ、古田新太さん演じる充に胸ぐらを掴んで追い詰められ、謝っても土下座しても許してもらえないその姿には、もちろん同じようなスーパー店員のエプロンをしていても桃地の面影は一切ありません。

 松坂さんにとっては『新聞記者』を手がけた河村光庸プロデューサーの企画という再タッグ、そして『ヒメアノ〜ル』、『愛しのアイリーン』、『犬猿』などの吉田恵輔監督のオリジナル脚本よる鮮烈なヒューマンサスペンス作品が新たに誕生しました。

 全てのはじまりは、よくあるティーンの万引き未遂事件。中学生の少女・花音(伊東蒼)がスーパーの化粧品売り場で万引きしようとしたところを店長の青柳に見つかり、逃走。追いかけられた末に、国道に出た途端、乗用車とトラックに轢かれ死亡してしまいます。一緒に暮らしていても娘のこと無関心だった少女の父親・充は、「娘が万引きをするわけがない」と信じ、疑念をエスカレートさせていく。せめて花音の無実を証明しようと、事故に関わった人々を追い詰める。事故のきっかけを作ったスーパーの店主、車ではねた女性ドライバーは、父親の圧力にも増し、加熱するワイドショー報道によって、混乱と自己否定に追い込まれていく。さらには離婚した少女の母親、学校の担任や父親の職場も巻き込んで、関係する人々全員、そして自らを苦しめていきます。

 撮影当時のインタビューで、主演の古田さんはこの映画の見どころを「真相を暴くサスペンスではない」と話している通り、実はこうだったという真相を辿っていく物語ではありません。どうしようもない事件が起きた、その瞬間からの人々の思いや行動がリアルに映し出されます。その姿は、どの登場人物の気持ちを思って観ても、ただただ、辛い感情が湧き上がる内容です。そして、失うこと、背負うということを、言葉ではなく、映画で教えてくれる作品でした。

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