トラウマシーンもいっぱい 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』はグロくてワクワク

ワクワクでグロい!『魔宮の伝説』の魅力

 冒険活劇といえば『インディ・ジョーンズ』。顔がハリソン・フォードという超ハンサムで文武両道のセクシー考古学者、インディアナ・ジョーンズが主人公の大人気シリーズだ。スティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスの手がける3部作(『クリスタル・スカル』のことは一旦忘れよう)、その中で最も異質極まりないのが、9月24日『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』である。

 子供の頃、『魔宮の伝説』が一番好きだったという人も多いだろう。なぜなら、本作は前後の作品に比べて圧倒的にコメディ色が強まった、ドタバタアクションアドベンチャーだかからだ。一方で、シリーズの中で一番ダークかつグロい作風という異質さ。実は評価は3部作の中でそこまで高くなく、興収も一番低いのにインパクトはピカイチ。そんな本作の魅力を深堀りしていきたい。

ノンストップのローラーコースターアクション

 冒頭の舞台は上海のナイトクラブ(店名は「オビ=ワン」)。ダイアモンドを巡るギャングとの取引で毒を守られたインディは解毒剤を求めつつ、敵と戦うことになるという乱痴気騒ぎが繰り広げられる。もうこの時点でカオスの極み。インディが焼ける串焼きをそのままギャングの男に投げ刺して、文字通り人間ケバブを作ってしまったシーンは、本作にこれくらいエグい描写が出てきますよというスピルバーグ監督からの楽しい予告だ。その場に偶然居合わせた歌い子のウィリーも巻き込まれ、インディと相棒のショート少年は市内でカーチェイスを繰り広げる。ナイトクラブから一刻の休憩もないまま、彼らは飛行機に乗って逃げ込もうとするが飛行機が出発するとき、機体にギャングの名前が書かれているのを見せて私たちの笑いを誘う。結局まんまと策略通りに乗ってしまった3人組は、今度は墜落する飛行機からゴムボートで脱出を図る。絶対死ぬだろという高さから無事に川に着水した彼らは、ようやく一息。ここまで20分もの間、映画はインディも観客も休ませることなくノンストップでアクションを繰り広げられる。すでにクレイジー。何がクレイジーって、この20分のめちゃくちゃな描写がその後展開されていく映画の本筋に一切関係ないってことだ。

 テンポの良さはこれに止まらず、そこからトントン拍子で子供たちと神秘の石を奪われた村人たちを助けるために、インディたちは邪教集団の根拠地である宮殿に向かう。ここでメインキャラクターを改めて紹介しよう。なんと、本作のヒロインことウィリーは人間的に全く好かれないヒロインである。インディとも一切気が合わないし、臭うからと言って象に香水をかけたり、常に叫び続けたり、もう誰か早く始末してくれと目と耳を覆いたくなるような美人。そんな歪み合う二人の嫌悪が恋心に火をつけてしまう、というのは『アフリカの女王』(1951年)のハンフリー・ボガートとキャサリン・ヘプバーンを彷彿とさせるものだ。ちなみに、ウィリー役のケイト・キャプショーは他でもないスピルバーグの奥さんである。本作のオーディションをきっかけに付き合い、二人は1991年に結婚した。本作は全編を通じて巻き込まれた金髪美女のウィリーが、ひたすら嫌な思いをしていくという作品でもあって、カメラ越しに気のある女性をいじめるスピルバーグの心境はさながらヒッチコックのそれみたいだ。未来の奥さんになんてことさせているんだ、とツッコミが止まらない。

 そしてヒロインが最悪すぎる代わりに最高のキャラとなったのが相棒のショート。『魔宮の伝説』の一年後に公開された『グーニーズ』(スピルバーグ製作)のリッキー役でもお馴染みのジョナサン・キー(キー・ホイ・クァン)が演じている。頭が切れて洞察力も高く、幾度もインディのピンチを救う最強ボーイのショート。大人の敵とも普通に渡り合って戦う彼が、本作のMVPであることは間違いない。

 さて、そんな一行が辿り着いたパンコット宮殿は「おえーっ」と思わず顔を顰めてしまうような、グロの温床だった!

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる