『おかえりモネ』が訴える対話の大切さ  「ゆっくりでいいよ」というメッセージ

『おかえりモネ』が訴える“対話”の大切さ

 相手に何か助言を求めるわけではない「問わず語り」でさえ、自分の気持ちを整理できることがある。朝岡はウェザーエキスパーツのロビーで出会った耕治に向けた吐露をきかっけに「自然災害の危機と隣り合わせの地でも、そこに住み続けることの意味」について気づきを得る。自分のキャスターとしてのスキルについて「説得力がない」と思い悩んでいた莉子(今田美桜)は百音に気持ちをぶつけ、「何もないなら何もないなりに考えるわ。世の中にはどういう人がいるか」と、彼女なりの答えを見つけ出した。自分には傷ついた経験がない。そういう人たちを簡単に理解することはできないかもしれないけれど、自分とは違う立場の人の気持ちや状況を想像することはできるし、精一杯想像することこそが、「理解」への第一歩なのかもしれない。

 そんな莉子と百音の会話を聞いていた菜津(マイコ)は「傷ついていいことなんてない。でも、傷ついて本当に動けなくなってしまう人もいる」と、切に訴える。彼女もまた、社会で傷ついて引きこもっている宇多川に寄り添い、絶えず話しかけることで、固結びになってしまった彼の心をほぐそうとしていた。

 「あの時何もできなかった」こと、そして今も「自分に何ができるのか」と悩み続ける百音の心に寄り添い続ける菅波は、「あなたの痛みは僕にはわかりません。でもわかりたいと思っています」と言う。そして「話してください。ちゃんと答えますから。今後何を投げられても、あなたが投げるものなら僕は全部取ります」と、百音の全てを受け止める覚悟を誓った。

 菅波のこの姿は「傷を抱えて生きる人々にどう接したらいいか」という問いへの、このドラマなりの答えを表しているのかもしれない。「登米に行って、あなたに会って、僕は自分が少し変わったと思っています」と語る菅波自身も、自分が抱えていた苦悩を百音に話すことで変わることができた。人は、誰かに話してみて、言葉にしてみてわかることがある。そして、「対話」は相互作用だ。何でもいいから話そう、そして焦らずゆっくり、一つずつ考えていこう。そんなメッセージが、このドラマには込められているのではないだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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