映画『SLAM DUNK』プレイシーンはどうなるか スポーツアニメの現在から考察

スポーツアニメの重要な画面サイズ

 スポーツをいかに映像で見せるかはカメラサイズも重要な要素だ。普段、テレビ中継などで見る、コート全体が見渡せるような引きのロングのショット、全身の動きがよく見えるフルサイズショットに、より上半身に寄ったミディアムサイズのショット、そしてクローズアップと様々なサイズを組み合わせて描くわけだが、原作マンガの魅力をしっかりと再現するなら、とりわけフルサイズショットとミドルサイズショットが重要になるのではないか。

 流川がドリブルで切り込む際の身体移動と筋肉の躍動の魅力は、中継のようなロングショットでは表現しきれない。こういうプレイは、やはりミディアムかフルサイズのショットで見たいところだ。顔のクローズアップばかりでも何をしているのかわからなくなる。

 三井寿のきれいなシュートフォームを見せたいと思ったら、手だけでなく、足のばねを含めた全身を見せないと表現できない。原作ファンなら、桜木のジャンプシュート2万本の練習の時に、ジャンプシュートは全身を使って足から力を手に伝えるのが大事だと教えられている。それを知っている原作ファンを納得させるには、全身の動きをきちんと描く必要がある。

 他にも、赤木が相手センターと激しいゴール下の争いをしているシーンでは、両者の肉体のぶつかり合いが堪能できるサイズで捉えるとなると、やはりミディアムサイズくらいで見たい。

 桜木のリバウンドも、彼がいかに高く、速く跳べるのかを表現せねば、その凄さを伝えられない。そのためには、全身がいかにコートから高い位置にあるのかを示すショットも必要になる。本作に限らず、スポーツアニメではミディアムサイズとフルサイズの描写が肝心だと思うが、それらのサイズのショットをCGでいくのか、手描きでいくのか、それとも『弱虫ペダル』のようなハイブリッドでいくのかの差配が非常に重要になる。

 全身の筋肉が連動して動く様が見えるサイズでスポーツを描くのは、大変なことである。そのサイズの描写が一番大変なのだが、原作がそれを描いた作品だったので、原作者自ら監督に乗り出している以上、やはりアニメも挑まないわけにはいかないだろう。アニメ映画が、原作同様にそれがハイレベルで表現されたものに仕上がっているのなら、それは大変魅力的な作品になるだろう。かつて、原作がスポーツマンガを革命したように、映画もスポーツアニメの表現を更新するかもしれない。

■公開情報
映画『SLAM DUNK』(タイトル未定)
2022年秋公開
監督・脚本:井上雄彦
配給:東映
(c)I.T.PLANNING,INC.
(c)2022 SLAM DUNK Film Partners
公式サイト:https://slamdunk-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/movie_slamdunk/
公式Instagram:https://www.instagram.com/slamdunk_movie/
公式Facebook:https://www.facebook.com/movie.slamdunk/

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