井上順、『おかえりモネ』安西社長を愛嬌あるキャラに 魅力はつかみどころのなさ?

『おかえりモネ』井上順、独特の社長キャラに

 『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)では、東京オリンピック組織委員会会長・津島寿一を演じていた井上は、同作でも重要な役割を担っていた。

「東京オリンピックのために奮闘する主人公・田畑(阿部サダヲ)と敵対する政治家・川島(浅野忠信)との争いに巻き込まれるようなキャラクターでもありましたが(物語後半では川島の策略により、田畑とともに組織委員会を降ろされる)、津島と田畑の関係が決して良好ともいえないのが、田畑を取り巻く人間たちとの緊迫した空気を醸し出すのに効果的だったように思えます。穏やかな物言いとは裏腹に、その表情や言葉尻に一筋縄ではいかない雰囲気が漂っていました。『真田丸』(NHK系)織田有楽斎役など、過去に井上順さんが出演されている作品を振り返ってみると、本人から漂う人の良さそうな雰囲気が、かえって策略的に見えるキャラクターも多かったのではないかと思います」

 『おかえりモネ』ではこれまでのイメージも引き継いでいるが、その気さくさは役柄ごとに微妙に違う。

「もちろん、人の良さが全面的に押し出され、魅力的に見えるキャラクターもありました。『エール』で演じていた木下は、本作に登場する喫茶店バンブーの夫婦・保(野間口徹)と恵(仲里依紗)の恋のキューピッドのような役どころであり、保を心配する言動が決して押し付けがましくなく、けれど彼のことをきちんと心配しているさまが出ていた。オムニバス回の1話しか登場しませんでしたが、幼い佐藤久志(山口太幹)の親戚のおじさんという役どころも納得の、これまたひょうひょうとしてマイペースなキャラクターでした。そうしたなかで、『おかえりモネ』の安西のひょうひょうとした雰囲気は、『エール』に登場した木下に近いと感じます。でも、実際にはとてもしっかりした人で、言うべきことははっきり言うのが安西。どの役柄にも気さくなイメージは共通しているように感じますが、その気さくさは役柄ごとに微妙に異なっていることに気付かされます。社長として会社の軸をしっかりと保ちつつ、若い人たちの意見を取り入れて運営する器用さと会社を一代で築き上げた人物らしい説得力のある物言いは安西和将ならではで、また違った井上さんのイメージを作り上げたのではないかと思います」

 井上が愛嬌のある社長に仕上げた安西という独特なキャラ。ウェザーエキスパーツの根っことしての安西社長の存在が、百音ら社員たちの励みに、そして指針になっているに違いない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる