『彼女はキレイだった』が真に伝えたかったテーマとは? 韓国作品リメイク随一の成功作に

『かのきれ』は韓国作品リメイクの成功例に

 「ザ・モスト」の存続がかかった最新号が印刷される土壇場で、宗介(中島健人)の元に届いたのは覆面作家・楠瀬凛からの取材を受けるという連絡だった。そして指定された場所に出向いた宗介の前に、普段とは違う出立ちの樋口(赤楚衛二)が現れる。9月14日に放送された『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)最終話。ドラマ序盤から中盤までの愛(小芝風花)と宗介の再会を軸にした四角関係を描くラブコメディと、終盤のお仕事ドラマとしての様相。その両方に適切なゴールを見出すと同時に、このドラマが真に伝えたかったテーマを提示する。これは言うまでもなく、理想的なハッピーエンディングだ。

 楠瀬凛の正体が樋口であると知って戸惑う宗介。渡されたインタビュー原稿を掲載すれば「ザ・モスト」の存続は確実だが、樋口の人生を犠牲にしてしまうと考え掲載を見送る判断を下すことに。しかし完成した誌面を見ると、そこには樋口のインタビューが掲載されていた。愛をはじめ編集部の面々はそこで初めて楠瀬凛の正体を知り大慌て。同時に樋口は編集部に別れのメールをよこしたままいなくなってしまう。そんななか、宗介のもとには本社からアメリカへ戻ってくるよう指示が入り、総務部に戻った愛は絵本作家のちかげ(日高のり子)から一緒に働かないかと誘われるのである。

 「人ってやりたいことしている時、すごくキレイに見える」。宗介からアメリカに誘われながらも、悩んだ末に子どもの頃からの夢を追うことを決める愛。樋口からもらった「人生を楽しめ」という言葉と、経営を学ぶ目標を見つけ生き生きとしている梨沙(佐久間由衣)の姿に触発された愛のこの言葉は本作の本質であり、『彼女はキレイだった』というタイトルがある種のミスリードとして働いていたことがわかる。あたかも主人公の容姿の変化を意味するものだと思わせ、その実は将来に無限の夢を見ていた子供時代の内面的なキラキラをいつの間にか失ってしまっていたということである。好きなことをやって、好きなように人生を楽しむ。それに気が付けば、誰もがキレイに輝くチャンスを得られるのだと、ここにきて教えてくれるわけだ。

 もっぱらこうした提示されるテーマも含めて、ストーリーもキャラクター設定も、6年前に放送されたオリジナルの韓国ドラマとほぼ同じものをやり切ったということになる。それについてはオリジナリティへの懸念を指摘する声もあるようだが、少なくともだいぶ異なる尺の長さのなかでぎゅっと凝縮させたことで生まれるテンポの良さと、無駄なく器用に削ぎ落とした脚色によってよりコミカルさが生まれ、より描きたいテーマが際立ったことは評価できよう。とりわけこの最終話の展開の速さは出色である。

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