『ナイト・ドクター』思わず重なる医療現場の“現実” 田中圭、岸優太らが理想を体現する

『ナイト・ドクター』田中圭、岸優太らの活躍

 どんな患者でも受け入れるという、ナイトドクターチームが追求してきた“理念”。しかし、その前に立ちはだかる限界。「受け入れられない命もある。受け入れたところで救えない命もある」。9月6日に放送された『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)第10話は、これまで掲げてきた“理念”が空虚な“理想”に成り果てないためのナイトドクターたちの葛藤と選択が、緊急時の逼迫する状況とともに淡々と描かれていく。

 約2時間たらい回しにされた患者の受け入れをすることができず、また次に運び込まれた患者も助けることができず無力感に苛まれる美月(波瑠)。その翌日、美月がシフト通りの休みであった夜に、台風の接近と雷雨が重なりあさひ海浜病院の周辺一帯が停電になってしまう。自家発電に切り替わったものの、電気の復旧の見通しは立たず節電の必要に迫られる。するとそこに、自家発電設備を持たない近隣の病院から、人工呼吸器を必要とする患者や透析患者など、電力を使った医療機器が命綱となっている患者の受け入れ要請が相次ぐのである。

 偶然にも放送日が、北海道全域にブラックアウトを引き起こした胆振東部地震からちょうど3年を迎えた日であること。また昨今台風や豪雨などの自然災害が頻繁に起きていること、そして何よりも新型コロナウイルスによって人工呼吸器を必要とする人々が大勢いる現状に、都市部を中心とした医療現場のひっ迫状況。劇中のあらゆる事象が現実と重なり合うなかでも、なにかひとつのトピックに照準を絞って深掘りすることはせず、ただひたすら“命を助ける”という一点だけに注力する姿でひとつのエピソードが構成されるのは、医療ドラマのセミファイナルとして相応しい選択に思える。

 リソースが圧倒的に不足している“医療崩壊”の状況下で求められる、他の病院からの受け入れ要請に「断れば全員死ぬかもしれない」とダイレクトな言葉をもって受け入れを決断する成瀬(田中圭)。自分たちの能力や現状で稼働可能な機器や、病院内のあらゆる場所を使ってでも受け入れ態勢を整えるナイトドクターや看護師たち。休みでも駆けつけ、初療室の指揮をとる美月に、“節電隊長”として病院内を走り回る深澤(岸優太)。悪戦苦闘しながらも次々と患者を救うその姿はいささかドラマティックな見せ方ではあるが、それは医療従事者が全知全能のヒーローなのではなく、ひとりの人間であるということの示唆に他ならない。



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