美味しいフライドチキンを悪用するのは許さない! 『エクストリーム・ジョブ』の痛快さ

『エクストリーム・ジョブ』の痛快さ

 それぞれのキャラが個性的ではあるものの、チーム全体として愛しさが残るのは、状況に応じて彼らがブレにブレまくる人間臭さが描かれているからかもしれない。メガホンを取ったイ・ビョンホン監督によると、手掛けたコメディ作品では状況よりもまずキャラクターありきでアプローチしていたのだが、シチュエーションコメディが基本になっているという(参考:ハリウッドリメイク決定に監督感激!韓国歴代興収No.1『エクストリーム・ジョブ』/『シネマトゥデイ』)。

 この刻一刻と変化する状況に個性あふれるメンバーがブンブン振り回されながらも、なんとか自分たちの正解を導き出そうと奮闘する。そんな彼らを見ていると、どこか今という時代に翻弄される私たちに共通するものがあるのかもしれないと思えてくるのだ。バカにされ、笑われ、決してスマートではない彼ら。しかし、周囲から間抜けだと思われた人たちが愚直に仕事と向き合うことで最後にはちゃんと報われる。そんな正統派な物語が、理不尽極まりない時代をなんとか生きようともがく私たちには必要なのだ。

 これまで警察への信頼が揺らぐような作品も少なくなかった。それだけ、私たちは正義の味方への期待値が下がってしまっていたのかもしれない。なぜなら現実は厳しく、地道に努力を続けていれば報わるなんて言葉も、今やなかなか信じられないものになったから。そんな絶望と怒りに飲まれそうになるエクストリーム(極限)状態を味わったからこそ、せめてエンタメくらいは歯切れよく、のどごしよく味わいたいというのが、今の気分ではないだろうか。

 この映画では通りすがりのおばさんも、悪者を一蹴する強さがある。フライドチキン店員になった麻薬捜査班が、庶民のニューヒーローになって正義を信じさせてくれる。フライドチキンとビールを片手に、この映画を見ている誰もが明日の正義の味方になれる、そんな勇気さえ湧いてくる映画なのだ。

■配信情報
『エクストリーム・ジョブ』
Netflixほかにて配信中
監督:イ・ビョンホン
出演:リュ・スンリョン、イ・ハニ、チン・ソンギュ、イ・ドンフィ、コンミョン(5urprise)
(c)2019 CJ ENM CORPORATION, HAEGRIMM PICTURES. CO., Ltd ALL RIGHTS RESERVED

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる