美味しいフライドチキンを悪用するのは許さない! 『エクストリーム・ジョブ』の痛快さ

『エクストリーム・ジョブ』の痛快さ

 ザクザクとした衣にジューシーな鶏肉。甘酸っぱいチキンム(大根の漬物)をポリポリとはさみつつ、メクチュ(ビール)でグビグビッと流し込む。「チメク」(チキン+メクチュ)なんて造語まで生まれた「チキン共和国」といえば、韓国だ。

 ペダル(デリバリーサービス)が充実している韓国では、フライドチキンが国民食として根付いて久しい。少額投資で開業できることから、一般市民でもビジネスに参入しやすいとあって、2018年には韓国のフライドチキン専門店は約3万7000店にも上った。その数は日本の国民食であるラーメン店よりも多いとも言われているから、どれほど馴染みのある店かおわかりいただけるだろう。

韓国・KyoChonチキン 東大門店のフライドチキンとビール

 それだけ身近な「フライドチキン店」と、物騒な「麻薬捜査」というミスマッチな組み合わせが掛け合わさった一本のコメディ映画が韓国で大人気となった。映画『エクストリーム・ジョブ』だ。本作の人気は興行収入歴代1位を記録し、観客動員数は歴代2位に。ついにはハリウッドでリメイクされることが決定したほどだ。

 多様な価値観が認められる世の中になり、娯楽も実に多種多様になった。とはいえ、やはり国をも超えて多くの人の心を掴む「王道」はあるものだ。『エクストリーム・ジョブ』はまさにフライドチキンのように、「みんな大好き」と言いたくなる大衆娯楽映画なのだ。

 ざっくりとしたあらすじは、何をやってもダメダメな麻薬捜査班のコ・サンギ班長(リュ・スンボム)チームが、なんとか名誉挽回を目指して麻薬界の大物イ・ムベを捕まえようと画策する。だが、何をしてもトチってしまう面々。張り込みもなかなかうまくいかない。そこで目をつけたのが、アジトの前にあるフライドチキン店だった。

 「宅配の注文がアジトぐらいからしかこないため、店を売りに出すのだ」という店主の言葉を真に受け、コ班長は頭の上がらない妻には内緒で退職金を前借りしてまで店を買い取ることに。店内で対策本部を設置して、注文にかこつけてアジトに突入しようという作戦に出たのだ。

 当初は注文が来たら、別のお店で購入して届ければいいと思っていた。ところが店には想定していたよりも多く客が訪れてくる。看板を掲げながら営業をしないのは周囲に怪しまれると考えたチームは、見様見真似で商売をスタートすることに。すると、思いがけず行列のできる大人気店となり、捜査どころではなくなってしまって……。

 と、あらすじだけ見てもツッコミどころ満載のストーリーだ。以下、ネタバレを含むので自分の目で先に物語の結末を見届けたいという方は、ぜひここで配信サービスサイトへと移動することをおすすめしたい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる