村上春樹と濱口竜介の見事な融合 『ドライブ・マイ・カー』で考える“演じる”とは何か
黒沢清作品を彷彿させる西島秀俊の佇まい、原作のみさきがそのまま登場してきたような三浦透子、序盤でいなくなるも最後までその存在感が消えることのない霧島れいかなど、キャスト陣の好演も見逃せない。中でも、この作品の中で最も難役と思える俳優の高槻を演じた岡田将生が素晴らしい。“芝居とは”というこの作品のテーマをそのまま体現したかのような役柄で、先日放送された『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)に続き、大きな飛躍を遂げたことを印象付けた。
そして、原作から新たに付け加えられた終盤の展開。ジャンルとしてもうまく形容できない、自分自身を見つめ直すきっかけにもなり得る作品だろう。今まで観てきたどの映画とも違い、今まで映画を観て感じたことのない感情が芽生えたところに、この映画のすごさが隠されているのだと思う。179分、長いようで全くそうは感じない。もう一度、いや何度でもスクリーンで観たい作品だ。
■公開情報
『ドライブ・マイ・カー』
TOHO シネマズ日比谷ほかにて公開中
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、ペリー・ディゾン、アン・フィテ、安部聡子、岡田将生
原作:村上春樹『ドライブ・マイ・カー』(短編小説集『女のいない男たち』所収/文春文庫刊)
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介、大江崇允
音楽:石橋英子
製作:『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
配給:ビターズ・エンド
2021/日本/1.85:1/179分/PG-12
(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
公式サイト:dmc.bitters.co.jp