『ワイルド・スピード ICE BREAK』は新章に繋がる重要作 原点へのオマージュも
2001年にシリーズ1作目が公開されて、今年で20年目を迎えた人気シリーズ『ワイルド・スピード』。最初は違法なストリートレースに情熱を燃やす走り屋たちの物語だったが、4作目『ワイルド・スピード MAX』(2009年)あたりから路線を変更。アクションシーンをたっぷり盛り込んで、ドムことドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)をリーダーにした「ファミリー」が手強い敵と戦うエンターテイメント大作になっていく。そんななか、『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017年)はこれまでの作品のキャラクターを集結させながら、新しい章へと繋げる重要な役割を持った作品だ。
物語はキューバでドムが愛妻レティ(ミシェル・ロドリゲス)と休暇を楽しんでいるところから始まる。そこに現れたのは謎の女、サイファー(シャーリーズ・セロン)。彼女はドムの弱みを握っていて、自分の組織のために働くように命じる。その頃、DSS(アメリカ外交保安部)の捜査官、ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)も休暇中にミッションを与えられていた。それは大量破壊兵器の電磁パルス砲を武器商人から奪うこと。ホブスはドムとファミリーの手を借りて首尾よく電磁パルス砲を強奪するが、ドムが電磁パルス砲を横取りして消えてしまう。そして、ドムを操って電磁パルス砲を手に入れたサイファーは次にDSS本部を狙った。果たしてドムとファミリーは彼女の野望を阻止できるのか。
前作『ワイルドスピード SKY MISSION』(2015年)の撮影中に、ドムの親友でシリーズのレギュラーだったブライアンを演じたポール・ウォーカーが事故で急逝。今回、その穴を埋めるためにホブスが加わり、さらに『SKY MISSION』でドムやホブスと戦った宿敵、デッカード(ジェイソン・ステイサム)がファミリーに協力することに。ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサムという、アクションスターが勢ぞろいした豪華なキャスティングだ。そんななか、最初は喧嘩してばかりのホブスとデッカードが次第に相手に一目置くようになる、というバディ映画的展開もあり、それが2人を主人公にしたスピンオフ作品『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)に発展した。
一方、ドムは元恋人のエレナ(エルサ・パタキー)と彼女の間にできた赤ん坊を人質に取られて、強制的にファミリーから切り離されることに。今回は怒りを胸に秘めながら孤独にミッションを遂行するダークヒーローといった趣だ。そんなドムに最後まで愛を貫くのがレティだ。レティは『MAX』で死んだと思われていたが、6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013年)で記憶を失った状態で発見されてファミリーに復帰した。とにかくレティはドム一筋。ドムが自分たちを裏切ったなんて思わずに信じ続ける。ブライアンがいなくなった今。彼に変わるドムの相棒がいないなかで、レティとドムの絆はますます重要になっていくだろう。