『ワイルド・スピード SKY MISSION』で国宝級のガン飛ばし “武闘派”ミシェル・ロドリゲスの魅力

ミシェル・ロドリゲス“武闘派”としての魅力

 現在のハリウッドにおいて、ミシェル・ロドリゲスほど「武闘派」という言葉が似合う女優はいない。もちろん彼女より身体能力の高い、もっと踏み込んだ表現を使えば、ケンカが強いであろう人物はたくさんいるし、もっとハードな環境で育った人も大勢いる。ブレイク後の犯罪歴で言っても、彼女より無茶苦茶な人は多い。しかし、それでもやはり「武闘派」の称号が似合うのはミシェルなのである。それは本人の(メディア越しに見える)人格と人生、そして演じる役が合致しているからだ。4月25日、『ワイルド・スピード SKY MISSION』がフジテレビ系で地上波放送されるが、同作でも彼女の「武闘派」としての魅力は遺憾なく発揮されている。もうリアルサウンド映画部で何回『ワイスピ』の話をしたか分からないが、彼女の魅力については書いていなかった。これは完全に私の失態だ。今回はケジメをつけるという意味でも、ミシェル・ロドリゲスという人物の魅力を語りたい。

『ワイルド・スピード』(c)2001 Universal Studios. All Rights Reserved.

 ミシェル・ロドリゲス、1978年生まれの41歳。思春期には両親の仕事や反抗期の関係で、5つの学校で放校処分を受ける。その一方で幼いころから俳優への憧れを持っており、1999年にはエキストラなどで俳優活動を開始。そして『ガールファイト』(2000年)では350人のオーディションを勝ち抜き、主役の座をゲット。“ボクシングに打ち込む不良少女”という限りなく当時の彼女自身に近い役を好演。全観客が「この人はマジだ!」と驚愕する睨み方……否、「睨む」という表現では生ぬるい、“ガンの飛ばし方”で絶賛された(本作のメインビジュアルにも使われていますが、このときの目つきは尋常じゃないです)。続いて今なお続く『ワイルド・スピード』(2001年)では、ヴィン・ディーゼルのタフな恋人レティ役を、『バイオハザード』(2002年)では「生きて帰ったらセックスしたいね」と豪快なジョークを飛ばす特殊部隊隊員を熱演。さらにはサーフィン映画『ブルークラッシュ』(2002年)に、サミュエル・L・ジャクソン、LL・クール・J、コリン・ファレルといった、今になって思うと濃すぎる面子と並び立った『S.W.A.T.』(2003年)など、次々と話題作へ出演し、ガンを飛ばしまくった。

 かくしてボクサー、不良、特殊部隊、サーファー、SWATと、順調にワイルドなキャリアを築いたが、彼女の場合、私生活もワイルドだった。2000年代中盤からは暴力事件やカーチェイスを繰り返し、ついには逮捕までいってしまう。これでキャリアも終わったかと思いきや、しかし、彼女は絶え間なく働き続けた。テレビドラマ『LOST』(2004年~)に出演するかたわら、中小規模で、アクションもない映画で修業を積むと、満を持して大作アクション映画業界へカムバック。それが『アバター』(2009年)である。

 『アバター』の監督は『ターミネーター2』(1991年)や『タイタニック』(1997年)など、サバイバル力の高い女性を好んで描くジェームズ・キャメロン。ここでミシェルに用意された役は……もちろん銃・タンクトップ・サングラスのキャメロン3種の神器に加え、インディアン風の戦闘メイクまで施された女戦士役だった。ガンの飛ばし方も円熟味を帯び、実家のような安心感に世界が満足。さらに『ワイルド・スピード』と『バイオハザード』にも、死んだけど復帰する離れ業を見せた。他にも女戦士役の『マチェーテ』(2010年)、女戦士役の『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(2011年)、女戦士になる男役の『レディ・ガイ』(2016年)、女戦士の師匠役の『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)など、タフな女性キャラを演じ続けている。41歳の現在でも、やはりガンの飛ばし方は他の追随を許さない(もちろんアクションのない映画にも出ているし、それはそれで魅力的なのだが)。

『ワイルド・スピード SKY MISSION』(c)2015 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 『ワイルド・スピード』は、そんなミシェルにとって最高の遊び場である。何せここには、格闘、銃、車、ストリート……etc、とにかく彼女を輝かせる全てが揃っているのだから。先述の通り1回死んだのだが、『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013年)で「頭を撃ち抜かれて葬式をしたけど、実は勘違いだった」と、緻密な伏線回収で見事に復活。元気満々で総合格闘家のジーナ・カラーノとタイマンを繰り広げる。ここで注目したいのが、彼女のファイト・スタイルだ。ジーナは総合格闘家らしく、タックルや関節技を駆使して戦うが、ミシェルはボクシングをベースにしたケンカ殺法である。関節技を極められると噛みつきで脱出し、時には相手を抱きかかえて自分も一緒に階段を転がり落ちる。『アトミック・ブロンド』(2017年)などのスタイリッシュな動きとは違う、泥臭く、荒々しい戦い方だ。けれども、マジもんのガンの飛ばし方と相まって、そういう振り付けがバッチリ決まる。これがミシェルのアクション女優としての強みだろう。

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