森田望智の芝居からなぜ目が離せないのか 『おかえりモネ』『全裸監督』での心情表現

森田望智の芝居からなぜ目が離せないのか

 同じく2019年、森田望智の名前が一気にエンタメ界を駆け巡る。

 国内のみならず、世界に向けて配信されたNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』。80年代にアダルト業界の風雲児とうたわれた村西とおる氏を主軸に映像化されたこの作品はすべてにおいてセンセーショナルであった。

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』

 森田が演じたのは村西監督(山田孝之)と公私を共にした女優・黒木香役。厳格な母親に育てられ、その抑圧から逃れようと性産業の現場に自ら飛び込んできた大学生を彼女は体当たりの演技で魅せた。モデルとなった人物を80年代にテレビで目にした人は、語り口調やビジュアルなど、その完璧な再現度に驚いたのではないだろうか。

 いや、体当たりの演技や再現度といった言葉で流してしまうのは違うかもしれない。憑依型とも異なる森田の“そこで生きている人物にしか見えない”芝居は衝撃的で、とんでもない演じ手が出てきたと思ったし、多くのメディアが取り上げたビデオ撮影現場のシーンより、21〜22歳(当時)でこんな演技ができる俳優がいたことの方がよほどインパクトが強かった。

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』

 彼女は今年配信がスタートした『全裸監督 シーズン2』(Netflix)でも同じく黒木香役を演じている。前作が熱と勢いで性産業の世界で昇りつめようとする男性たちのサクセスストーリーだったのに対し、2ではそこから転げ落ちる者たちの悲哀と時代の移り変わりが描かれている。唯一の理解者だったはずの村西と次第に思いがすれ違い、決別していく黒木の諦観や絶望、母性のようなものを繊細に体現した森田の演技は素晴らしく、最大限に評価されるべきものだとも思う(ドラマとして黒木の結末については思うところもあったが)。

 彼女の芝居が刺さる理由のひとつが何気ないせりふに役の人物の心情を乗せる巧みさだ。ドラマティックなせりふをそのまま語れる俳優は多いが、たとえば「それ取って」「そろそろ行こう」といった日常的な言葉に過多にならず、かつ物語に必要なニュアンスをつけられるプレイヤーは非常に少ない。森田の演技にはそれがある。

 『おかえりモネ』野坂碧は、現状、モネとのかかわりもさほど深くなく、プライベートも明かされていないキャラクター。それが今後、どういう形でストーリーラインに絡む存在になるのか目が離せない。

 そういえば、森田演じる野坂が冒頭のせりふを放ったテレビ局の社会部記者・沢渡役は玉置玲央。昨年放送された『恋する母たち』(TBS系)では大手町に事務所を構えるエリート弁護士と、不倫の末、彼に捨てられる新人弁護士という間柄で共演していた。

 TBSでの仇(かたき)を朝ドラで……? いやいや、どちらにしても、森田望智が今後、エンターテインメント業界の台風の目になることは間違いない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』
Netflixにて配信中
総監督:武正晴
監督:後藤孝太郎
出演:山田孝之、満島真之介、玉山鉄二、森田望智、恒松祐里、柄本時生、伊藤沙莉、冨手麻妙、後藤剛範、渡辺大知、MEGUMI、西内まりや、笠松将、増田有華、吉田栄作、伊原剛志、宮沢りえ、石橋蓮司、室井滋、小雪、ピエール瀧、リリー・フランキー、國村隼
原作:本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版・新潮文庫)
脚本:山田能龍、小寺和久
プロデューサー:山本晃久
制作:C&Iエンタテインメント
エクゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆(Netflix コンテンツ・アクイジション部門 ディレクター)
企画・製作:Netflix
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/全裸監督

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