放送年順での視聴がオススメ? 『賢い医師生活』監督から紐解く今観たい韓国の人間ドラマ
1.はじめに
現在Netflixでシーズン2が配信中の韓国ドラマ『賢い医師⽣活』。現地のNetflixで視聴数上位にランクインするなど、今注⽬の作品のようだ。実際にシーズン1視聴後、覚えきれないと思っていた多数の登場⼈物が⼼に棲みついて離れず、激しいロスを味わい、⾸を⻑くしてシーズン2を待ち続けたと⾔っても過⾔ではない沼深い作品だった。
観終えた後に残る、“誰かの何気ない⽇常がこんなにも愛おしくて温かい”という余韻。そんな不思議な魅⼒を持つドラマを⼿がけてきた、シン・ウォンホ監督の名作『応答せよ』シリーズと『賢い〜』シリーズに迫りたい。
2.各作品の概要
『応答せよ』とは、⻑い年⽉を共にしてきた男⼥の深い友情と⻘春時代を描いたヒューマンドラマだ。2012年より韓国のケーブルテレビ(tvN)で放送され、『応答せよ 1997』、『応答せよ 1994』、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』の3シリーズに渡る。それぞれの作品は独⽴しており、主要キャストも異なるが、共通して韓国の各時代のリアルな⽇常が⼿に取るように分かり、視聴者はまるでその街に住んでいるような感覚に陥る。さらに、誰と誰が結ばれるのかという「将来の婿当て」が組み込まれており、最後の最後まで予測しながら視聴できる⾯⽩さがある。また、⼈⽣は選択の積み重ねであり、選択した先で上⼿くいくこともあれば、失敗することもあるというメッセージとともに、幸せな部分だけでなくあえてほろ苦さを描くことでリアルさのある作品になっているため、作品や登場⼈物を⼀層⾝近に感じることができる。
『賢い監房⽣活』(以下、邦題『刑務所のルールブック』)とは、メジャー契約を控えた韓国で⼤活躍中のプロ野球選⼿が、ある⽇突然犯罪者として扱われ、刑務所に⼊ることとなってしまうヒューマンサスペンスだ。厳しい監房⽣活を⽣き抜くために、同じ監房で暮らす個性豊かな登場⼈物たちと共存し⽀え助け合う⽇常と、野球にしか興味のなかった主⼈公の新たな成⻑を描いたドラマで、脚本家は『応答せよシリーズ』『賢い医師⽣活』と別の(『ラケット少年団』のチョン・ボフン脚本家)が担当している。⿇薬中毒者に詐欺師など、⼀夜にして昨⽇の当たり前が全く通⽤しない世界に放り込まれた主⼈公が、偏⾒に左右されず、⾃分の⽬で⾒たものだけを信じてもう⼀度野球選⼿として復活を⽬指す姿に胸が熱くなり、過去を抱えたキャラクターたちがいつしか彼の夢を⾃分達の夢として捉えて⼀致団結していく過程は、涙なしでは観ることができない。
『賢い医師⽣活』シーズン1とは、⼤学時代を共にし、40歳で同じ病院の医師として働く こととなった5⼈の男⼥の多忙な⽇常を描いたヒューマンドラマだ。ハラハラする医療ドラマというよりは、彼らの何気ない⽇々にスポットを当てた作品で、患者に⼼から寄り添ったり、後輩の育成に悩んだり、恋をしたり、⼦育てをしたりと、患者想いで親友想いの登場⼈物たちが、それぞれに”最善を尽くす”姿に毎話⼼が温まる。医者だからといってヒーローではなく、彼らもまた1⼈の⼈だと気付かせてくれる名作で、終始ブレないキャラ設定にいつの間にかどハマりしてしまう。また、本作品では5⼈がバンドを結成する設定になっており、彼らが実際に演奏する⽣バンドは何度もリピートして聴きたくなるほどで、⽬でも⽿でも味わえる作品だ。