『ナイト・ドクター』田中圭演じる成瀬の苦悩 前半戦最後に描いた“救急医療のあり方”

『ナイト・ドクター』田中圭演じる成瀬の苦悩

 成瀬(田中圭)のもとに届いた郵便物から、成瀬が訴えられていることを知ってしまった美月(波瑠)は八雲院長(小野武彦)に話を聞きにいく。以前勤めていた病院で搬送されてきた少年の手術を担当した成瀬。命は助かったものの、その少年は半身麻痺になり、術前に「必ず助ける」と宣言した成瀬は少年の母親から訴えられたというのだ。そんな折、救命救急センターには浴室で溺れた6歳の男の子が運び込まれてくる。心配そうな母親に「絶対に助けます」と告げる深澤(岸優太)に、「患者や家族に二度とその言葉を口にするな」と厳しく言う成瀬。男の子は一命を取り留めるが、その後容態が急変。さらに成瀬たちは、母親が記入した問診票にある違和感を覚えるのだ。

 7月19日に放送された『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)第5話は、オリンピックによる2週間の放送休止前の最後のエピソード。第1話では病気の妹の面倒を一人でみながら救急医を目指す深澤、第2話では母親を失った経験から患者を見捨てない医師を目指す美月、第3話で桜庭(北村匠海)の心臓の病、第4話で幸保(岡崎紗絵)の葛藤と、ナイト・ドクターチームそれぞれのバックグラウンドを描いてきた前半戦。そのトリを飾るのはやはり最年長の成瀬で、同時に医療現場におけるいくつもの課題を示していく。

 そのなかで最も大きなテーマとなるのは、「インフォームド・コンセント(IC)」である。20世紀ごろから患者の自己決定権が重視される風潮が高まるとともに生まれたICは、医療行為に際して医師が患者に対して病状や治療内容について適切な説明を行い、充分な理解を得た上で同意を得るという一連の手続きのことである。日本でも2007年の医療法の改正によって努力義務として明文化されたものの、専門知識を必要とする医療に関して患者側が充分に理解できないまま、合意を得ることだけが先行してしまうことなどの問題点がある。そしてもちろん、患者には治療を受ける権利も、拒否する権利もあるのだ。

 劇中で描かれる成瀬の過去は、まさしく“患者側が充分に理解できないまま”という、とりわけ救命救急の現場のように即座に理解し判断することを必要とされる場合で起こり得るモデルケースのようなものだ。未成年者の手術で必要とされる、親権者の同意。結果的に命は助かっても、子供が元通りの生活を送ることができないことから生じる戸惑いや不安。成瀬の「医療には限界がある。それでも患者は100%完璧な医療を望んでくる」というモノローグ。だからこそ、医師と患者側の充分なコミュニケーションは必要である反面、それでもなお可能な限り早急な治療が必要となる場合ではうまくいかない難しささえもはらんでいる。

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