佐藤健が“88年世代”で頭ひとつ抜けた存在となった理由 『るろ剣』を経て世界も視野に?

佐藤健、『るろ剣』を経て世界も視野に?

 2006年の6月28日深夜に放送がスタートしたドラマ『プリンセス・プリンセスD』(テレビ朝日)で俳優デビューを果たしてから丸15年が経ち、改めて佐藤健のフィルモグラフィーを振り返ってみれば、思いのほか出演作が多くないことに気が付く。たとえば同い年でライダー俳優としては1年後輩の瀬戸康史や戦隊ヒーロー出身の松坂桃李あたりは、長期間の稼働が必要な舞台劇も含めて70本以上の出演作がある。それに対し、佐藤の場合は映画やドラマ、アニメの声優から端役まで含めてもざっと50本ほど。それでもすでに多くの主演作があり、映画でもドラマでも堂々たる“代表作”が複数存在している。そう考えると、なんとも恵まれた、稀有なキャリアの持ち主だと思えてならない。

 もちろん出世作となったのは2007年から放送された『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)である。オダギリジョー主演の『仮面ライダークウガ』(テレビ朝日系)から始まった「平成ライダー」シリーズは、現在も若手俳優の登竜門としての位置付けで知られている。それが確たるものとなったのは、前年に水嶋ヒロが主演を務めた『仮面ライダーカブト』(テレビ朝日系)と、佐藤主演の『電王』の辺りからであり、いまなおそのブランド力が保たれているのは、彼らライダー俳優たちのその後の努力の賜物に他ならない。つまり佐藤は自身のブレイクと同時に次の世代のための道を切り拓いてきたといってもいいだろう。

 この『電王』から『るろうに剣心』までの期間の出演作は、一見すると他の若手俳優たちと同じような道のりを歩んでいたように見えるが、その実かなり密度の濃いものであり、明らかに後々のキャリアにつながっている。まずこの期間で真っ先に思い出されるのは、やはり自身の野球経験が役に反映された『ROOKIES』(TBS系)だ。それを皮切りに、外見の程よいチャラさと内面とのギャップを兼ね備えた当時の“現代の若者”感が巧く活かされた役柄が続き、それは『メイちゃんの執事』(フジテレビ系)や『Q10』(日本テレビ系)といったラブコメ作品から、『ブラッディ・マンデイ』(TBS系)のようなシリアス、ひいては『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ系)の傑作エピソード『顔の道』での過剰にならない恐怖演技にいたるまで、あらゆる作品へ柔軟に溶け込んでいくのである。

 こうした作品群を経て、2012年に『るろうに剣心』の緋村剣心役という格好の代表作を得ると、そこからの飛躍ぶりは目を見張るものがある。と、ここで気が付くのはこの時点でまだデビューから6年ほどしか経っていないということである。2010年代前半、ちょうど若手俳優たちが群雄割拠する時代が訪れたタイミングでいち早く当たり役に巡り会えたことは何よりも幸運であり、もちろんそこには持って生まれた身体能力と努力の成果でもある。まさに三位一体で掴み取ったチャンスは同世代をリードするための有効な起爆剤となり、作品の成功も相まって有望な若手俳優のひとりから、存在だけでスケール感を持ち合わせる映画スターへと一気にジャンプアップする。現にその後の出演作は、映画が主だっているわけだ。

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