評論集『脚本家・野木亜紀子の時代』
晶と恒星はなぜ惹かれ合う? 西森路代が『獣になれない私たち』で考えた“女性観”
恒星が作り笑いや、いい人であろうとしてしまう人に敏感なのは、兄の存在が関わっている。彼の兄もまた、自分の気持ちを押し隠し、誰かを傷つけないように生きている人であったからだ。
晶は何か悩みがあったとき、「気持ち悪い」とまで言われているというのに、彼氏の京谷(田中圭)ではなく恒星に本音をぶちまける。晶のことを「あらまほしき女性」であると思っている人には、彼女の悩みも声も届かないからだろう。晶自身も、恒星に率直に話せるのは「飲み屋で会うだけの間柄だし」「いままで散々、キモいとか気持ち悪いとかキモいとか言われてきたし」と言っている。
晶だって、1人の人間であり、何もかも受け止められる女神のような女性ではないと知っている人にしか、晶の気持ちは通じない。これは、晶だけのことではないだろう。
そして、恒星の思う「気持ち悪さ」がゼロな人間こそが、恒星と付き合っていた橘呉羽(菊地凛子)だったのである。しかし、呉羽を「気持ち悪い」と思わないことにも、恒星のバイアスがかかっている。呉羽の場合は、恒星が思っているほど強い女性でもないわけで、強さを崇め奉ることも、その人のことを、都合良く扱っていることにつながるからである。
……続きは本書にて。
■西森路代
1972年、愛媛県生まれのライター。大学卒業後は地元テレビ局に勤め、30歳で上京。東京では派遣社員や編集プロダクション勤務、ラジオディレクターなどを経てフリーランスに。香港、台湾、韓国、日本のエンターテインメントについて執筆。また2016年から4年間ギャラクシー賞の選奨委員も務めた。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『わたちたちのおしゃべりの記録』(駒草出版)『「テレビは見ない」というけれど』(青弓社)など。
■書籍情報
『脚本家・野木亜紀子の時代』
著者:小田慶子、佐藤結衣、田幸和歌子、成馬零一、西森路代、藤原奈緒、横川良明
発売日:7月20日(火)予定
ISBN 978-4-909852-17-5
仕様:四六判/256ページ
定価:2,750円(本体2,500円+税)
出版社:株式会社blueprint
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