『青天を衝け』実写×VFXによって生み出されたパリのスケール感 栄一に人生の転機が訪れる
大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)は第22回より「パリ編」に突入。このパリでの経験が栄一(吉沢亮)の人生の大きな転機となる。
『青天を衝け』放送前の今年1月に開かれたリモート会見でも、このパリ編は早くから話題に挙がっていた。その焦点は、このコロナ禍においてどのようにして栄一らがパリ万博に参加する様子を描くのかということだ。結果的には、その会見でもプランとして挙がっていた、パリでの実写と日本国内での撮影シーンを合成して作品が作られている。
使節団の一行が凱旋門に登り、壮大なパリの街並みを見下ろす場面やアンヴァリッド廃兵院とナポレオン1世の墓を訪れるシーンは全て合成。演じる吉沢亮らはグリーンバックを前に、驚く芝居をしているのである。中でも、徳川昭武(板垣李光人)がナポレオン3世(ジュリアン・ジョラン)に謁見する場面は、緻密な絵コンテと細かい撮影指定によって完成しているショット。演出の田中健二氏は、「国内の似たような場所で撮ったり、VFXで背景を作ったりすることも技術的には可能ですが、本物に勝る『圧倒的なスケール感』はありません」と実際の映像にこだわった理由を語っている(『青天を衝け 後編(NHK大河ドラマ・ガイド)』より)。
パリの街並みを見渡し「夢の中にいるみてぇだ」と目を輝かせる栄一。目の当たりにした欧州各国の先進技術や社会制度は、帰国後の事業へと活かされることとなる。傷痍軍人を収容した慈善病院、それが社会福祉制度によって成り立っていることに感銘を受けた栄一は、後に東京養育院を作る際の参考にしている。
コーヒーの苦さに思わずえずいたり、舞踏会で昭武に踊りを誘う女性に激昂したりと水戸藩士の振る舞いが滑稽かつユニークに描かれる一方で、栄一は西洋の文化を興味津々に受け入れていくのが面白い。アルフェー号で初めてのバターに舌鼓し、ほとんどの日本人がその苦さに敬遠していたというコーヒーも好んで飲む。使節団の面々が憤慨する舞踏会では、男女が一緒に踊る集団見合いのような様子に「これはいい仕組みだに」と笑みを浮かべる。驚くべき順応性である。