上白石萌歌、憧れの『世にも』で恐怖を体現 『ジョジョ』を彷彿とさせる『デジャヴ』の熱
2020年11月に放送された『世にも奇妙な物語 ‘20秋の特別編』(フジテレビ系)内のエピソードの一つ『タテモトマサコ』を覚えているだろうか?
主演を務める大竹しのぶの怪演、「言霊の力」を持つ館本雅子を彼女自身の言葉で存在を無きものにした志倉楓(成海璃子)の逆転劇。昨年、30周年を迎えた『世にも奇妙な物語』の歴史において、「傑作」とSNSを中心に大きな話題となった作品だ。そして、多くの視聴者が言及していたのが『ジョジョの奇妙な冒険』をオマージュとしたポイントがいくつもあること。「私は平穏に暮らしたいだけなのに」というセリフは吉良吉影の名ゼリフを、楓が腕に情報を記憶させる行為はジェイル・ハウス・ロック戦を想起させる演出で、「タテモトマサコ」とグーグル検索しようとするとサジェストには「ジョジョ」が一番最初に出てくるほどだ。
原案を担当したのは荒木哉仁。昨日6月26日に放送された『世にも奇妙な物語 ‘21夏の特別編』では『あと15秒で死ぬ』と『デジャヴ』の脚本を手がけているが、この『デジャヴ』が再び『ジョジョ』をイメージさせる作品に仕上がっているのだ。
物語は南野ひかり(上白石萌歌)が何度も同じ日を繰り返すというもの。その光景にひかりはかつて同じような事を体験したことがあるかのような感覚を覚える「デジャヴ」だと感じる。その様子は『ジョジョ』で吉良吉影のスタンド能力の一つ「バイツァ・ダスト」によって川尻早人が何度も同じ朝を繰り返すエピソードに酷似している。
もちろん、細かなシチュエーションは違っているが、ひかりが一軒家に住んでいること、父・正隆(鶴見辰吾)が玄関に立つ構図、母・凛子(亜呂奈)とのやり取り、テレビに映るニュース番組と大枠で囲っていけば共通点は多く発見でき、その一つひとつの点が『ジョジョ』という、いわば『デジャヴ』を作り出している大きな要因となっているわけだ。
『ジョジョ』との共通点を度外視しても、『デジャヴ』は複雑に構成された非常に面白い物語だ。その繰り返しは現実ではないひかりの頭にある記憶の世界で行われていること、ひかりの家に侵入し家族をバラバラにした覆面姿の犯人の正体、そして再びデジャヴが始まるというゾワッとするラスト。我々の想像の先をいく展開の読めないストーリーは『世にも奇妙な物語』の真骨頂であり、また『ジョジョ』的であるとも言える。
『世にも奇妙な物語』に出演するのが今回が初めてであり、初主演だという上白石萌歌の演技も素晴らしかった。公式コメントで「以前雑誌のインタビューで、“今後の夢は?”と聞かれた時に“『世にも奇妙な物語』に出演することです”と答えたくらい、この作品に出演することは昔からの夢で、幼い頃からの憧れでした」と答えていることからも分かるように、その演技にはいつも以上のふつふつとした熱が感じられる。
何度も何度も繰り返される1日の中で、自分一人だけが変化を求められる難しさもきっとあったことだろう。そんな中で上白石の俳優としての凄みが出ていたのは覆面の犯人に立ち向かっていくことを決心した日の目の輝き。正隆の父としての優しさを知り、ひかりは大粒の涙を流しては、みるみると瞳に力が宿っていく。犯人を断定するきっかけとなったその「おかしさ」に気づく姿や、記憶の限界を超えて運命を乗り越えていく勇気は、やはり吉良吉影に立ち向かっていく川尻早人にも見えてくる。