グウィネス・パルトロウが唯一“観られる”自身の出演作とは? その理由が切ない
マーベル・スタジオの『アイアンマン』シリーズなどで知られる女優のグウィネス・パルトロウは、演技をしている自分を見るのが嫌で、出演作は基本観ないそうだ。しかし、トライベッカ映画祭のパネルに登場した彼女は唯一、ウェス・アンダーソン監督作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)だけは特別で、他の出演作と一線を画しているわけについて話した。
「私の父がセットに遊びにきてくれたんです。その日はバスから降りる私をリッチー(ルーク・ウィルソン)が迎えにきてくれるシーンを撮っていました。そこには父もいて、とても特別な日でした。私は自分の姿を映画で見るのが大、大、大嫌いですが、あのシーンだけは私の全キャリアの中で唯一見られるんです」
パルトロウが演じたキャラクター、マーゴットがバスを降り、ルーク・ウィルソン演じるリッチーと再会する中、Nicoの「Three Days」が背景に流れているシーンだ。
彼女の父、ブルース・パルトロウはテレビ・映画監督でありプロデューサーとしても知られていた。そんな業界人の父が、自分の職場にやってきて仕事ぶりを見てくれた。何より、映画公開の1年後となる2002年にその父が他界してしまったのだから、パルトロウにとっては非常に思い出深いシーンであることがわかる。ブルース・パルトロウは58歳という若さで急逝したが、何よりグウィネスの30歳の誕生日を祝うためにやってきた旅行先、ローマで亡くなったというのが悲しい。彼は何年もの間、口腔ガンを患っていた。
しかも、その頃グウィネスと結婚していたコールドプレイのクリス・マーティンによる代表的な楽曲「Fix You」は父の死に嘆いていた彼女について歌ったというのだから、余計切ない。残念ながら2人は2014年に離婚している。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は、バラバラになっていたテネンバウム家の3人の子供たちが、死期が近いという父に呼び戻されて一緒に暮らす物語。そのプロットと、自身の父との思い出の交差もまた、パルトロウにとって本作が特別である理由なのかもしれない。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。Instagram/Twitter