『恋はもっとDeepに』はまさに“ご褒美回” 海音が倫太郎にもたらしたものを改めて知る

『恋はもっとDeepに』は“ご褒美回”に

「みんなが想像したことはいつかきっと必ず叶うから」

 『恋はもっとDeepに ―運命の再会スペシャル―』(日本テレビ系)は、ここまでツンデレ御曹司・蓮田倫太郎(綾野剛)と海洋学者・渚海音(石原さとみ)の2人を見守ってきた人へのまさにご褒美回だった。

 愛おしい人が突然いなくなってしまうのと、徐々に徐々に“別れ”が近づいているのを感じながら過ごすのでは、どちらが辛いものだろうか。

 大切な人がどんどん遠ざかってしまうのと、大切な人からどんどん遠ざからなければならない方と、どちらが身を裂かれるほどに切ないだろう。ビデオレターに残したメッセージを託すしかない海音と、もう会えない相手からの動画を受け取るしかない倫太郎を観るにつけ、そんなことに想いを馳せずにはいられなかった。

 海音が地上で過ごした1年間を、彼女にとって漏れなく大事な人たちと動画を通して振り返る。確かにそこに海音が“いた”。そして、昨日のことのように皆と出会った頃のことを振り返る海音に、それに対して思い思いの言葉を返す鴨居研究室の皆や倫太郎の様子に、確かに今も皆の中で生きる海音の息遣いを聞いた。

 本作が心地良いのは、結局海音の正体を確実にわかっているのは鴨居教授(橋本じゅん)だけである点だ(倫太郎でさえ、“海から来た”以上に確かなことは下手すれば知らないかもしれない。途中で突き止めるのをやめ、ただただ受け入れた)。藍花(今田美桜)はイルカだと言い、椎木(水澤紳吾)は地底人、Mr.エニシ(福山翔大)は海女さんだと言う。極論、彼女の正体が何であろうとそんなことどうだって良いのだ。それぞれの中に生きる海音の姿こそ“本当”なんだ。なんだか辻褄が合わないところや違和感があっても、それぞれの想像力で優しいストーリーを紡いで、自分の目の前にいる“海音”と接してきたのだ。“私にとって故郷みたいな場所”だと海音に言わしめた鴨居研究室のみんなも倫太郎も、そこに“理由”を求めない。自分の常識や自身のものさしで相手のことを推し量ろうとは決してしないのだ。

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