『青天を衝け』堤真一×木村佳乃、涙なしには見られない夫婦の最期 山崎育三郎も初登場

『青天を衝け』異例の演出だった円四郎の最期

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第17回「篤太夫、涙の帰京」は、そのタイトルが示す通りに円四郎(堤真一)の死がまだ色濃く残る回となった。

 家茂(磯村勇斗)と和宮(深川麻衣)、栄一(吉沢亮)と千代(橋本愛)とそれぞれの愛の形が描かれる中、涙なしに見られなかったのが円四郎を思うやす(木村佳乃)の姿だ。慶喜(草なぎ剛)の側近に円四郎を推薦した恩人・川路(平田満)が付き添い、やすに伝えられた訃報。吉原の売れっ子芸者であったやすは、三味線を教えながら自由気ままに暮らしていくことを決めていた。そして、やすは遺言の言葉にもあった番いの鳥が描かれた掛け軸から円四郎が残した手紙を見つける。

 そこに書かれていたのは、慶喜との出会いで人生が靄が晴れたように変わったこと、やすとの出会いを含めた人との縁、慶喜が作っていく日本の未来。鳥の囀りと共に庭には円四郎の姿が。

 「きっとめっぽうおかしれぇに違ぇねぇ」ーー慶喜が描く未来に思いを馳せ、やすを見つめる円四郎。『ボクらの時代』(フジテレビ系)で菅田将暉が俳優はカメラ目線で演技はしないことを語っていたが、10秒余りカメラを見つめるショットは異例中の異例。『青天を衝け』としても、大河としても挑戦的な試みだったのではないだろうか。つまりは、それほどまでに円四郎が大切に描かれてきたということ。愛する妻とのシーンが最期の姿となった。

 一足遅れて円四郎の死を知った栄一と喜作(高良健吾)。2人もまた円四郎に思いを巡らせるのだった。それは人選御用の命を受け、深谷宿から岡部の領内を抜けようとした時のこと。一行は岡部藩代官・利根吉春(酒向芳)に呼び止められる。栄一と喜作はもともとは岡部領地の百姓。一橋家に入ったことを知り自分の元に返してくれというのが利根の言い分であるが、それを猪飼(遠山俊也)が「掛けがえのなき家中の者」として「承服しかねる」と断るのだった。

 これまでは百姓として言いなりになるしかなかった栄一が、今では武士となり一橋家の家臣として守られる身分となった。それも全ては円四郎のおかげ。悔しさと怒りを滲ませる利根の横を通過し、栄一は涙しながら「この気持ちを平岡様にお伝えしたかった」と感謝の意を言葉にする。なお、「円四郎は私の身代わりとなったのだ」と栄一らに伝える慶喜の横で、大きな刀傷を顔に負った恵十郎(波岡一喜)が必死に涙を堪える姿も名場面であったことを記しておきたい。

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