浅野忠信が『おかえりモネ』で見せる哀愁と憂い 数分の登場シーンに込められた求心力

浅野忠信が『おかえりモネ』で見せる哀愁

 太宰治が自身を投影した同名小説が原作である『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』では、まさに太宰のような小説家・大谷を好演。物憂げな色気が凄まじい。『淵に立つ』では浅野演じる服役を終えた八坂が、友人の家庭をじわじわと確実に侵食していく様を静かに、だけれども激しく、不気味に、存在感はじっとりしているのにどこか乾いた演技で体現して見せた。

 彼が持つ得体の知れなさに有無を言わせぬ凄味と深みが加われば『新宿スワンII』で演じたスカウト会社社長・瀧のように、人生の辛酸をなめ、数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろう説得力までその存在感やオーラとして醸し出せてしまう。

 一瞬にしてその姿だけで観る者の心にざわめきや不穏な空気を感じさせることができるからこそ、彼の活躍の場は日本のみにとどまらない。ハリウッド映画はじめ海外作品にも多数出演しており、彼の出演映画は100作をゆうに超えている。直近ではハリウッド映画『モータルコンバット』の公開が控え、本作には日本から浅野の他に真田広之が本格出演している。

 数ある出演オファーも厳選しており、多忙を極める浅野を朝ドラで観られようとは。今後明かされていくのであろう新次の喪失感の原因や、息子・亮との親子関係の立て直しなど“闇”も“光”もどちらも心して覗きたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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