『おかえりモネ』における"語り"の役割とは 竹下景子が生み出す適度な距離感

『おかえりモネ』における語りの立ち位置

 そもそも東日本大震災から10年経過した現在地を意識して作られていることを思うと、“語り”の視線を海洋生物である牡蠣とし、家族を“海から”見守る中で、あの震災を経て再構築されているだろう人と海の関わり方や自然観、死生観などまで描かれていくのかもしれない。気仙沼はじめ被災地の方々にとっては、生活の場であり生活の糧を得る場であった“海”が、震災による津波で沢山の命や生活を奪っていった元凶にもなったわけで、“海”に対する想いや感情はもちろん複雑で複合的で我々の想像を絶するようなものがあるだろう。普段はとても穏やかで陽の光をキラキラ反射させる水面が美しく“恵み”を与えてくれる海と、突然牙を剥いたかのように荒ぶり全てを飲み干し流し去ってしまう海。“海”はいつだって「命」ととても近いところにある。

 今まさに気仙沼を離れた百音だって、登米の地で森林組合の職員として、人知を超えた海だけではない自然の驚異を実感しているところだ。

 第3週「故郷の海へ」では、そんな百音が祖母の初盆に合わせて故郷に帰省する様子が描かれる。徐々に明かされる百音が地元を離れた理由も全容が明らかになりそうだ。いついかなる時も家族を包み込むような優しい語りかけの祖母・雅代のナレーションと一緒に引き続き百音らの成長を見守りたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter

※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」が正式表記。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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