『ジオストーム』は王道のパニック映画“ではない” 過去の同ジャンル名作を踏まえた挑戦

『ジオストーム』の本質は冒険サスペンス

 公開当時、普通のパニック映画だと思っていた僕は試写をみてかなりビックリしました。なぜって『デイ・アフター・トゥモロー』(現代の地球が氷河期に襲われる)、『2012』(古代マヤ文明の予言通り大地殻変動が起きて世界が壊滅する)みたいな作品をイメージしていましたから。けれど王道のパニック映画では“なかった”から『ジオストーム』は日本でもスマッシュヒットした、と言えるのかもしれません。そもそもパニック映画というのは一昔前のジャンルのイメージがあります。まず70〜80年代にたくさん作られました。そのシンボルともいえるのが超高層ビル火災を描いた『タワーリング・インフェルノ』でしょう。

 その後少しブランクをおいて90年代後半からまたブームとなり『タイタニック』(1997年  ※あえてパニック映画にカウントします)、『アルマゲドン』(1998年)が公開され、両作とも100億円以上の興行収入をあげる大ヒット作になりました。その後前述の『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)、『2012』(2009年)が登場します。これらも興行収入50億円規模のヒット作です。大がかりなパニックシーンはある意味出尽くした感はありました。

 『ジオストーム』はこうした“先輩たち”と差別化するために、パニック映画ではなく、パニック映画的設定を使ったアクション物に舵をきったわけですね。例えば宇宙ステーションで活躍するジェラルド・バトラーのシーンは宇宙版『ダイ・ハード』的な展開になります。それで思い出すのが『ツイスター!』(1996年)という作品。これは巨大竜巻を描いていますが、この作品も竜巻の恐怖より、その謎をつきとめようとする科学者たちの奮闘を描いたアドベンチャーものだったのです。

 そしてパニック映画というのは、大災害の中での人間ドラマが主眼となりますから悲しい場面も当然多くなります。また現実社会の中で多くの自然災害が起こっていますから、派手なVFXを使って描かれる“見世物としての災害”に抵抗があるという方もいらっしゃるでしょう。けれど『ジオストーム』はアクション映画だから、全体的に悲惨なシーンは少なく軽い気持ちで楽しめる作品になっています。実際、日本では公開当時、東京・上野の有名な銭湯である「寿湯」さんとタイアップして、ここを「地終嵐湯(じおすとーむゆ)」という呼称で、劇中登場する異常気象を熱い湯、氷風呂で体感できる、また浴室の背景画(いつもは富士山ですよね)が映画のスペクタクルシーンを描いたものになっている、というキャンペーンを展開していました。こういう軽いノリが似合うエンタメというわけです。映画好きの方にとっては既視感あるアクション、スペクタクルシーンのテンコ盛りでしょうが、逆に言えばツボを押さえた見せ場が多い、ということです。まだこの手の作品をみたことのない人にとってはとても新鮮でしょう。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■放送情報
『ジオストーム』
フジテレビ系にて、5月15日(土)21:00~23:10放送
監督:ディーン・デヴリン
脚本:ディーン・デヴリン&ポール・ギヨー
出演:ジェラルド・バトラー、ジム・スタージェス、アビー・コーニッシュ、アレクサンドラ・マリア・ララ、ダニエル・ウー、エウヘニオ・デルベス、エド・ハリス、アンディ・ガルシア
(c)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., SKYDANCE PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる