『おちょやん』千代がラジオドラマで女優として再帰 道頓堀の人々にも影響?

『おちょやん』千代の再帰は道頓堀にも影響?

 ラジオドラマ「お父さんはお人好し」の最初の顔合わせの日、脚本家の長澤(生瀬勝久)や夫役を演じる漫才師の花車当郎(塚地武雅)、12人の子どもたちを演じる役者たちやプロデューサーらを前に、竹井千代(杉咲花)は「一生芝居気晴らしてもらいます」と決意を新たにした。NHK連続テレビ小説『おちょやん』が第22週初日を迎え、千代が役者として、そして人として、魅力ある人物なのだと改めて感じる回となった。

 千代の役者としての魅力を感じさせるのは台本の読み合わせのシーンだ。当郎演じるアタ五郎と千代演じるチヨ子の掛け合いでは、現場から度々笑い声があがる。阿吽の呼吸で行われる二人の掛け合いは、まるで長年連れ添ってきた夫婦のようだ。それを横で見ていた長澤は安心したような笑みを浮かべていた。戦争で失われた家族の団らんを取り戻すため、一人でも多くの人にラジオドラマを聞いてほしいと願っている長澤にとって、自身が描いた「家族」が目の前にいることに安堵したのではないだろうか。

 千代の人としての魅力は、千代がラジオドラマに出演すると知った道頓堀の人々の反応と、ラジオドラマ最初の放送日に起きた出来事から伝わってくる。

 千代が役者を続けていることを知った鶴亀新喜劇の面々は明るい声をあげる。香里(松本妃代)のホッとしたような表情を見せ、座員たちから離れたところで熊田(西川忠志)の話を聞いていた一平(成田凌)の表情が少し緩んだ。岡福では、宗助(名倉潤)が無邪気に喜ぶ一方、みつえ(東野絢香)は心配のあまり、放送局に千代の居場所を聞き出そうとしていた。各々さまざまな反応を示していたが、道頓堀の人々が今も千代を気にかけていることが十分に伝わる。

 ラジオドラマ最初の放送の日、役者陣は緊張し、現場の空気は張り詰めていた。千代はそんな彼らの気持ちをほぐすため、当郎とのやりとりで、その場を瞬く間に和ませた。千代は顔合わせの日から、長女・京子役の中村律子(大橋梓)が余裕のない表情で台本に目を落としていたことを気にかけており、「ちゃんとやらな、みんなの足を引っ張ってしまうと思て…」と不安がる彼女の心をもほぐしていく。スタジオに向かう役者陣の表情は、生放送への緊張はあれど、どこか楽しそうにも見えた。

 劇中、新作の台本に思い悩む一平が「何かが足れへんのや…。もっと見た人の心をわしづかみにするような何かが…」と話していたが、その何かとはまさに、役者として人として、人々を魅了し、笑顔にしてしまう喜劇役者・竹井千代の存在そのものだと感じた。明日放送の第107回ではラジオドラマの本番がいよいよ始まる。ラジオドラマを介して、千代は多くの人の心をわしづかみにすることだろう。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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