『名探偵コナン 緋色の弾丸』赤井秀一の“正義” 『ゼロの執行人』との対比を考える

『緋色の弾丸』赤井秀一の“正義”とは

 正義の反対は悪ではなく、また別の正義だという。真実は1つでも、正義はそれぞれの人の分あるために、時には譲れないものを守るためにぶつかり合うこともある。今回は『名探偵コナン』シリーズの人気キャラクター、江戸川コナンと赤井秀一などの正義と、守りたいものについて考えていきたい 。

 『名探偵コナン 緋色の弾丸』は、人気ミステリー漫画『名探偵コナン』の劇場版24作品だ。原作でも高い人気をほこる赤井秀一をはじめとした赤井ファミリーの活躍が見られるということもり、注目するファンも多い。

 近年はキャラクターを深く掘り下げていくファンムービーとなっているコナンシリーズだが、本作でもその魅力は健在だ。赤井秀一のクールなスナイパーライフルを構えるクールな魅力や、秀吉のコミカルさと朝一級品の推理力、世良真純の身体能力などを駆使したかっこいい女子の魅力は、多くのファンを魅了していく。

 また既存キャラクターでは小さな探偵、江戸川コナンの助手とも言える灰原哀の魅力が今作では目立った。ことあるごとにコナンをサポートしながらも、時には子どもらしい言動で周囲を惑わせる小悪魔的な素振りがキュートだ。今作では少年探偵団の活躍や、サブキャラクターの鈴木園子の文句を言いつつも面倒見と人の良さも垣間見えるなど、細かい描写が特に印象に残る。

 毎年公開されるシリーズ映画ということもあり、最も重要なのはキャラクター描写だ。監督を務める永岡智佳は『名探偵コナン 紺青の拳』でも怪盗キッドや京極真の魅力を掘り下げ、また『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』などのファン向け作品も監督を務めている。監督としての作家性よりも、作品の世界観やキャラクターを大事にする姿勢なども感じられ、人気シリーズの監督を務めるのに適した、安定感のある人物と言える。

 本作の脚本を務める櫻井武晴はミステリー作品を得意としており、コナンシリーズでは『名探偵コナン ゼロの執行人』以来の起用となる。『名探偵コナン ゼロの執行人』では警察組織の闇をミステリー重視で描いた印象だが、今作ではミステリーを交えながらコナンらしいアクション描写を重視した印象だ。

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