『街の上で』『くれなずめ』などで魅力発揮 若葉竜也の佇まいは映像に奥行きを生み出す
4月29日公開の『くれなずめ』は、『あの頃。』と同じく群像劇だ。『アフロ田中』『アズミ・ハルコは行方不明』『バイプレイヤーズ』の松居大悟監督が、自身のオリジナル舞台劇を映画におこした。
友人の結婚式で余興を披露しようと、久々に集まった高校時代の旧友たちがともに過ごす数時間を、過去と現在を織り交ぜながら描いた作品で、予想を超えた展開が待つ。奇しくも『あの頃。』と同じく、こちらも6人組で、仲間と歌うシーンに思いが込められる。成田凌が主演を務め、若葉のほか、高良健吾、藤原季節らが、ある出来事を受け止められずにいる仲間たちを演じる。若葉の演じる明石は、なかでも大きな後悔を抱えており、後半で見せる感情の爆発に胸を締め付けられる。松居監督は、『くれなずめ』のタイトルに、「日が暮れそうでなかなか暮れないでいる状態を表す『暮れなずむ』を変化させ、命令形にした造語。形容できない時間、なんとも言えない愛おしい瞬間に名前をつけました」とコメント。割り切れなさを抱えて今を生きる観客に、パワーをくれる作品になった。
少し冷めたようでいて、底の見えぬ沼に引き込んでいくような瞳に、色気を感じさせる若葉。映画は「奥行きの芸術だ」としばしば言われるが、若葉にはまさに「奥行き」がある。フィルムからデジタルへと移行した今の映画の奥行きには、かつてのそれとは違いを覚えるときもあるが、若葉は、役者の居ずまいも奥行きを生むと感じさせる。若い頃から達者だったものの、20代も半ばを過ぎた『葛城事件』あたりから、ぐいぐいとその力量を表に見せ始めた。30歳を過ぎて、ますます勢いを増す俳優・若葉竜也。その奥行きある「深み」にこれからもずぶずぶと、はまらせてもらおう。
■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。
■公開情報
『街の上で』
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋⾕ほかにて公開中
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田凌(友情出演)ほか
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉 、大橋裕之
音楽:入江陽
主題歌:ラッキーオールドサン「街の人」(NEW FOLK / Mastard Records)
配給:『街の上で』フィルムパートナーズ
配給協力:SPOTTED PRODUCTIONS
(c)『街の上で』フィルムパートナーズ
公式サイト:https://machinouede.com/
公式Twitter:https://twitter.com/machinouede
公式Facebook:https://www.facebook.com/machinouede/
公式Instagram:https://www.instagram.com/machinouede/
『あの頃。』
公開中
出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希、山崎夢羽(BEYOOOOONDS)、西田尚美
監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
音楽:長谷川白紙
原作:劔樹人『あの頃。 男子かしまし物語』(イースト・プレス刊)
製作幹事:日活、ファントム・フィルム
配給:ファントム・フィルム
2021年/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/117分
(c)2020『あの頃。』製作委員会
公式サイト:https://phantom-film.com/anokoro/
公式Twitter:@eiga_anokoro
『くれなずめ』
4月29日(金)全国公開
監督・脚本:松居大悟
出演:成⽥凌、若葉⻯也、浜野謙太、藤原季節、⽬次⽴樹、飯豊まりえ、内⽥理央、⼩林喜⽇、都築拓紀(四千頭⾝)、城⽥優、前⽥敦⼦、滝藤賢⼀、近藤芳正、岩松了、⾼良健吾
主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ色」(Getting Better / Victor Entertainment)
配給・宣伝:東京テアトル
制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
(c)2020「くれなずめ」製作委員会
公式サイト:kurenazume.com
公式Twitter:@kurenazume
公式Instagram:@kurenazume