『まめ夫』坂元裕二×松たか子も 脚本家と俳優の“黄金タッグ”ならではの化学反応を探る
春ドラマの注目作といえば、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)が筆頭に挙がる。興収30億越えの映画『花束みたいな恋をした』を手がけた脚本家・坂元裕二のオリジナル作品であり、ファンにとっては待望の“坂元裕二連ドラ復帰作”だ。主役の大豆田とわ子を演じるのは松たか子。『カルテット』(TBS系)、『スイッチ』(テレビ朝日系)に続き、3度目となる坂元裕二×松たか子の組み合わせはまさに“黄金タッグ”と言えよう。とわ子の元夫役には『カルテット』から松田龍平も控えており、さらに胸を躍らせる。
一度看板を背負った俳優が再び同じ脚本家の作品に抜擢されることは珍しくなく、むしろ最近では増えているようにも感じる。視聴者にとっては期待を膨らませる材料になる一方で、「過去作を必ず越えなければならない」という高いハードルにもなるだろう。黄金タッグならではの化学反応を考えてみたい。
例えば、『俺の家の話』(TBS系)の宮藤官九郎×長瀬智也。俳優・長瀬智也の第一章の幕引きを託されたのは、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)や『タイガー&ドラゴン』(TBS系)など、6度目のタッグとなる宮藤だった。宮藤作品における長瀬はいつもデカくて強くて真っすぐで、とりわけ『俺の家の話』の寿一は長瀬智也のパブリックイメージに近しい役柄だったように思う。元プロレスラーの寿一がひたすら「俺の家の話だ」と繰り返す話にはどこの家庭にも起こるような普遍性を感じつつも、最終回は表舞台を去る一人の俳優へと向けられていた。その大胆な結末も長瀬×宮藤だからこそ実現したシナリオだ。
こちらも記憶に新しいのが、森下佳子脚本『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)である。“刑事と殺人犯による男女入れ替わり劇”という難題を任せたのは、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合)で小野政次を演じた高橋一生と、森下脚本常連の綾瀬はるかだった。森下作のリモートドラマ『転・コウ・生』(NHK総合)ですでに“入れ替わり経験”があり絶対的な信頼を寄せられていた高橋に対し、綾瀬のキャスティングには信頼に加えて“既存イメージからの脱却”を図ったのではないだろうか。