『ガンズ・アキンボ』で注目のスクリームクイーン サマラ・ウィービングの“悪魔的魅力”

サマラ・ウィービングの“悪魔的魅力”

 最近、様々な女優や様々なヒロイン像を映画の中で見るようになって嬉しい。その中でも、今もっともアップカミングな女優はサマラ・ウィービング。ブロンドヘアにビー玉のような真っ青のブルーアイズ。すごく美人だけど、決して区別がつかなくなるような典型的な“金髪美女”でもない特徴的な表情。同郷出身のマーゴット・ロビーと間違えられやすい女優ですが、マーゴットが小悪魔的な魅力を持つのに対して、サマラは誤解を恐れずに言うと、悪魔的な魅力を持つ女優なのです。

オーストラリア出身 おじさんは『マトリックス』のあの人

 サマラは1992年生まれ、オーストラリア人の女優ですが13歳頃まではフィジーやシンガポール、インドネシアやイタリアなどで過ごしていたというインターナショナルな幼少期の持ち主。その後、キャンベラの女子校に通い、そこで演劇をはじめ他校の演劇部の作品などにも出演したそう。実は父親が映画製作者および映画教授で、母親も大学で博物館学を教えているという、アカデミックな家庭の子です。そんな彼女の叔父さんは、俳優のヒューゴ・ウィービング。『マトリックス』のエージェント・スミス(いっぱい出てくる人)や『ロード・オブ・ザ・リング』のエルロンド役で知られています。よく見たら、サマラの父親ってぐらい顔がそっくり!

 もともとサマラもそういう家庭環境だったため、子供の頃からよく映画を観ていたらしく13歳の時に観た『プリシラ』に自分のおじさんがドレス姿で登場したことに驚いたそうな。その後、彼女は2008年には『アウト・オブ・ザ・ブルー』で、2009年から2013年の間は『ホーム・アンド・アウェー』とドラマ2作品でそれぞれ主演を務め、オーストラリアのお茶の間で人気を博しました。そんな彼女が世界的に知られ始めたきっかけが2015年の『死霊のはらわた リターンズ』でのヘザー役ではないでしょうか。小屋の中で悪霊の力によってソファーを負傷している足に落とされた時、四方八方から飛んできた釘に全身刺された時の叫び方は、その後“サマラ・スクリーム”(勝手に命名)として彼女の演技の一つ大きな醍醐味になっていくのです。

いつも血塗れになって叫んでいる 怒れるスクリームクイーン

 『死霊のはらわた リターンズ』出演後、彼女はより映画方面に進出。特にインディ作品の中でも、『ミナリ』で2021年のオスカーにノミネートされているスティーヴン・ユァンとの共演作『Z Inc. ゼット・インク』にて一気に彼女の真価を発揮し、その後Netflixオリジナル『ザ・ベビーシッター』でビー役を演じて存在感を出しました。『Z Inc. ゼット・インク』では、主人公デレクの務める大手法律事務所に差し押さえに対して不服の申し立てをしに来たメラニー役を演じたサマラ。感染すると理性がなくなり凶暴化するウイルスが蔓延した社内で、デレクとタッグを組んで電動釘打ち機片手に躊躇なく人を殺していくヒロイン! もともと吸っていたタバコを出された水の入ったグラスに入れるような性格です。普段聞くのはメタル、というハードコアな彼女がウイルス関係なく、狂気的な表情で殴り合っていく姿に痺れます。

 その狂気は『ザ・ベビーシッター』にも引き継がれます。12歳のコール少年のホットなベビーシッター、ビー。カルチャーリテラシーも高くて、思い切りもよくて、冴えない男子が夢見る最上級の美女なわけですが、そんな彼女が実は悪魔崇拝者でしたというのが映画の物語です。そう、サマラが小悪魔系女子ならぬ悪魔系女子だという所以がサタニックな題材の作品に出がち、というのがありまして。彼女のブレイクきっかけにもなった2019年『レディ・オア・ノット』でも、悪魔崇拝者の家族に嫁いだ花嫁を演じています。身寄りのない主人公グレースが名家の仲間入りをするために、ゲームに参加する。見つかったら殺されるという死の隠れんぼが強制的に始まってしまい、いまだに着たままの純白のドレスを翻しながら生き延びようとする彼女がとても美しいのです。

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