『時をかける少女』4DX版はドラマへの没入感を高める タイムリープの浮遊空間を体験!
細田守監督のアニメ映画『時をかける少女』の4DX版が、4月2日から公開される。
筒井康隆の同名小説を原作とする本作は、かつて大林宣彦監督によって実写映画化され、一世を風靡した作品だが、細田監督は新たな時代の物語として再構築。原作の約20年後を舞台とし、原作小説の主人公、芳山和子の姪である紺野真琴を主人公として新たな青春ストーリーを紡ぎあげた。
2006年の公開時、封切り時はわずか6館のみの小規模公開だったが、口コミで人気が拡大しロングランヒットを記録。国内外で高い評価を獲得し、細田守監督のキャリアの転機となった。
今回、公開から15周年、細田監督が設立したスタジオ地図10周年を記念して4DX版が公開されることとなった。色褪せない魅力を持つこの青春映画が、どのように生まれ変わったのか、一足早く体験させてもらったのでレポートをお届けする。
4DX演出が主人公のキャラクターを効果的に伝える
4DXは座席の振動や傾斜、水の噴射や風の吹きつけなどによって五感に体感させる演出であるため、アトラクション性の強いアクション映画と相性が良いとイメージしている人が多いだろう。『時をかける少女』は青春ラブストーリーなので、ミスマッチではないかと思うかもしれない。
だが、実際には4DXの演出は、映画のドラマ性を効果的に高めることもできると、本作を体感してもらえばわかるはずだ。
冒頭、赤い水平ラインに向かっていくカットで座席は傾斜していく。徐々にクローズアップになっていくと、赤い線はデジタル数字の羅列であることがわかるが、その数字にダイブしてどこか知らない世界に連れ出してくれる感覚を、座席の傾斜によって味合わせてくれる。映画本編の始まりの高揚感を劇的に高める効果を発揮しているのだ。
作品を通して最も激しく座席を動かしているのは、真琴がタイムリープする際に突入する異空間のシーンだ。現実から乖離した浮遊空間であることを体感させるために、4DXの座席の揺れ演出を用いて、初めて迷い込んだ空間での真琴の不安な真理を巧みに表現している。
日常的なシーンでも、真琴の細かい動作に合わせて座席を動かすことで彼女の心情に寄り添う演出をしている。足踏みしたり、寝坊して飛び起きたり、ジャンプしたりと、活発な女の子である真琴の躍動感あるキャラクターを強化するうえで4DX演出が大きく寄与している。彼女のやや落ち着きのない性格を物理的に伝えることに成功しており、4DXがキャラクター描写にも用いることができることを証明していると言える。
そして、本作の重要なシーンの一つである、自転車で商店街の下り坂を疾走するシーンでは、やはり座席の傾きでそのスリルを倍増させている。ブレーキの故障した自転車の恐怖をより強く表現して、ドラマへの没入感を高めており、映像だけでは味わえないスリルを提供してくれる。