大澤嘉工監督、JAM Project無観客ライブに感じた「20年積み重ねた仲間の存在」

コロナで見えたJAM Projectの強さ

コロナ禍で見えたJAM Projectの強さ

――メンバーへのインタビューカットは2月に撮影したとおっしゃっていましたが、ちょうど日本で新型コロナウイルスが感染拡大する直前ですね。これがコロナ感染拡大後に撮影していたら、きっと違った内容になりましたよね。

大澤:そうですね。全く違った話になったと思います。

――本作の企画はコロナの世界的流行の前に始まったと思うのですが、コロナ禍以前にはどんな構成にしようと考えていたのですか?

大澤:一番大枠というか、企画書的なレイヤー(構成)で言うと、結成20周年のライブツアーがあって、それがエンディングになるようなフワッとしたイメージは持っていました。ただ、コロナがあろうとなかろうと、監督の立場で長期ロケをやっていると、「あ、これで終われるな」というタイミングがある時に来るんですよ。もちろん、納品期限があるものなので、その期限内に仕上げるのが大前提ですけど。今回の場合は、最後にインタビューを撮っているんですが、あれが撮れた時に「終われるな」と感じましたね。

――本作はJAMのドキュメンタリーとしても貴重ですが、コロナ禍でミュージシャンが何を考え、何に苦しんだのかを記録したという点でも貴重だと思います。コロナに直面したメンバーを間近に撮影されて何か感じることはありましたか?

大澤:本編中、車の中で影山(ヒロノブ)さんを撮影した時に、「今までの人生で一番きつい」と話されるシーンがあります。影山さんが話していることはすごく深刻なんですけど、それを笑顔で言っているんですよね。この状況で笑顔になれるのはすごいと思うんです。それはアニソンというものに関わってきたからとも言えるし、何も説明しなくてもこの笑顔がすべてを表しているなと思いましたね。それと無観客ライブのシーンを編集している時、そのライブに参加された他のアーティストの話を聞いていて、僕は編集しながら泣くんじゃないかと思いましたが、そこにはやっぱり20年積み重ねた仲間の存在があるんだなと感じました。コロナがあって良かったとは言いませんが、こういう状況だからこそ、そういう強さがプリミティブに見えたという面はありますね。

――彼らはこの状況でもへこたれないというか、本当に強い方たちだなと思いました。その強さは、おっしゃられたようにアニソンだからこそなのでしょうか?

大澤:色々なことを積み上げてきた総合力でしょうね。人生に起きた出来事、ステージに立ち続けること、アニソンが市民権のなかった時代から活動してきて、市民権を得ていく過程を体験したこと、そういうことの積み重ねなんだと思います。そんな彼らの生き様が作品にも反映されているし、もっと言うとライブにも反映されているんだと思います。ライブってまさに生き様ですし、それがお客さんにも伝わっているんだと思いますね。

――20年間の積み重ねが確かにフィルムに焼き付いていますね。

大澤:はい。その20年を無理にフィーチャーせず彼らの今を撮る、それだけで彼らの積み重ねてきたものが映るはずだと思っていましたし、その今を描くために必要な過去も入れましたが、今と少し先の未来を撮ることが目標でした。繰り返しになってしまいますが、彼らの強さがどう培われてきたのか、映画を見ればわかるはずですし、それがコロナ禍でも発揮されています。僕の知り合いのミュージシャンや役者もコロナ禍で苦しんでいる人が大勢いますが、彼らにもこの映画を見てほしいと思っています。

タイトルに込めたもの

――『GET OVER』というタイトルは、「乗り越える」や「克服する」という意味で、今の状況に対して強いメッセージ性のある言葉ですが、このタイトルはいつごろ出てきたのでしょうか?

大澤:このタイトルに最終的に決めたのは最後のライブを撮った後ですが、最初に事務所の方とお会いする時に一枚だけの簡単な企画書のようなものを書いていたんです。その時に仮タイトルで『GET OVER』とすでに書いていました。

――そんな初期の段階に思いついた言葉だったのですね。

大澤:そうですね。でも、それは僕が勝手に考えていただけで。その時思っていたのは、50歳を過ぎてもシーンの中心で活躍できる人はそうそういませんから、いろいろなものを乗り越えてきたんだろうなと思ってその言葉を選んだんです。でも、撮影が始まって、コロナで状況がひどくなっていく中で撮影していると、いろんなものが雪だるまみたいにその言葉にくっついてきて、意味が大きくなっていったように思えたんです。そういう言葉は強いものだと思いますから、『GET OVER』でいこうと決まったんです。

――非常に力強いJAM Projectらしいタイトルだと思いますし、作品に選ばれた言葉のような気がします。

大澤:偶然と言えば偶然ですが、映画ってそういうものが付着していかないと良い作品になりませんからね。不思議な縁を感じます。

■公開情報
『GET OVER -JAM Project THE MOVIE-』
2月26日(金)から3月11日(木)まで2週間限定ロードショー
出演:影山ヒロノブ、遠藤正明、きただにひろし、奥井雅美、福山芳樹、ALI PROJECT、angela、GRANRODEO、FLOW、梶浦由記
監督:大澤嘉工
製作:井上俊次、二宮清隆
企画:松村起代子、宇田川美雪
プロデューサー:高橋義人
制作:東北新社
配給:東宝映像事業部
2021年/日本/カラー/16:9/114分
(c)2021「GET OVER -JAM Project THE MOVIE-」FILM PARTNERS
公式サイト:http://Jamproject-movie.jamjamsite.com
公式Twitter:@JAMProject_eiga

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