『青のSP』が切り込む現代の病巣 藤原竜也演じる嶋田隆平が説く“いじめてはいけない理由”
いじめを描くとき、いじめっ子の心の闇に原因を求めるステレオタイプも、本作はさりげなくスルーする。たしかに西田(池田優斗)には、レギュラーを奪われたという動機があった。しかしアレン(川村ジーモン凛一朗)は、教師たちにかまわないように言い、いじめられっ子の立場に身を置き続ける。「いじめられる方にも問題がある」ということではなく、いじめられることで自身を守れると、少なくともアレンは考えているのだ。そこにあるのは善悪で割り切れない人間関係であり、海外出身者が日本で暮らすことの困難さである。
一方、アレンに対するいじめを見かねた知り合いの半グレ「オクタゴン」のメンバーが、いじめっ子の1人、市原(奥智哉)に暴行を加える。さらに偽ブランドバックを捨てた西田も拉致される。いじめから波及して差別や格差の問題にタッチするが、ポイントはそこではなく、いじめの加害者がより直接的に報復を受けること。学校内の問題が当事者の手を離れて、いともたやすく暴力に転化していく様子は衝撃的だった。
単純な正義感で太刀打ちできない犯罪としてのいじめを、最後はヒロイックに解決しつつ(山田裕貴のヒーローキック!)、炎に包まれる西田に向けて隆平が放った「自業自得だろ」の一言が、なぜかすとんと胸に落ちた。学校を離れれば、誰もが暴力や理不尽と隣合わせの社会で生きなくてはならない。だからいじめてはいけないのだ。暴力を肯定せず、法によって守られるために。そうは言っても、さすがに「いじめられたから丸焼きにしてOKだよな」はないと思うが。
悲しみを胸に沈めた隆平は、岡部(遠藤雄弥)に会ったとき何を思うのだろう? 報復を否定せず、呪いの言葉を口にする主人公の中で答えはまだ出ていないように見えた。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
『青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:藤原竜也、真木よう子、山田裕貴、泉澤祐希、たくませいこ、渋谷謙人、智順、兒玉宣勝、金沢雅美、音尾琢真、石井正則、須賀健太、遠藤雄弥、明日海りお、峯村リエ、升毅、山口紗弥加、高橋克実
脚本:大石哲也、山岡潤平、小島聡一郎
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:河西秀幸、国本雅広、高橋史典
演出:国本雅広、白川士、高橋貴司
制作:カンテレ、ケイファクトリー
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