“空手バカ一代”になれない人間たちの物語 『コブラ会』シーズン3の爆発的なカタルシス

『コブラ会』シーズン3の爆発的なカタルシス

 しかし、この歯がゆさが最終話にて爆発的なカタルシスへと繋がる。足を止め、迷い、道を誤り、見失い、もがき苦しみ、さらにどこかにまだ迷いを持ったまま、未来へと歩を進める。そんな少年少女らの姿は大山倍達とは違った魅力に溢れている(実際、サマンサの立場になって考えると、誠実だけど真面目過ぎる青年ミゲルと、危なっかしいけど放っておけないロビー、どっちにも惹かれるのは分かるし、イチャついているところを百発百中で目撃されがちな奇跡的な間の悪さは同情に値する)。誰もが大山倍達よろしく、空手に全てを捧げることはできないのだ。だって空手以外にも人生があるのだから。いわば本作は空手バカ一代になれない人間たちの物語なのである。そんな等身大の人間たちの感情が丁寧に描かれた末に、とうとう爆発し、ド迫力のアクションシーンに雪崩れ込むカタルシスたるや。きっと天国の梶原先生も最終話まで観れば、ウィスキー片手に微笑んでくれるだろう。

 かつて『ブラック・ジャック』へのカウンターとして『ブラック・ジャックによろしく』という漫画があった。これを『コブラ会』と『空手バカ一代』に置き換えたなら、さしずめ本作は『空手バカ一代によろしく』である。本作に登場するのは、決して人生を全て空手に捧げる空手バカにはなれない、等身大の人間たちである。彼らの空手と共に進み続ける人生模様に、最高のクライマックスになるであろうシーズン4に向けて一気に加速するシーズン3に、刮目せよ! あと相変わらず1話30分で異様にテンポがいいので、晩ご飯を食べながら観るのにピッタリです。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■配信情報
『コブラ会』シーズン3
Netflixにて独占配信中

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