みくりと平匡ならどう生きる? 那須田淳P×金子文紀監督に聞く、いま『逃げ恥』を届ける意義

那須田P×金子監督『逃げ恥』続編をやる意義

 みくりと平匡がママ&パパに! 新垣結衣×星野源共演の人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、以下『逃げ恥』)が、2021年1月2日に新春スペシャルドラマとして帰ってくる。

 『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』と銘打たれた本作では、『逃げ恥』ワールドも現実と同じ時間軸で進むという。本当にいろいろなことがあった2020年。誰もが多くの課題を抱え模索を続ける今こそ、私たちには『逃げ恥』が必要なのだ。

 連続ドラマに引き続き、キャストもスタッフもチーム『逃げ恥』が集結。どのような背景を経てスペシャルドラマを紡ぐことになったのか。今回は、那須田淳プロデューサーと金子文紀監督に、その想いを聞いた。

「いつか」と思っていた続編を、世の中が変化した今こそ作ろう

――今回、新春スペシャルドラマを放送することになった経緯から教えてください。

那須田淳(以下、那須田):2016年10月に放送をスタートした『逃げ恥』ですが、おかげさまでたくさんの視聴者の方に共感していただけた作品になったと思っております。その上で、やはりみくりと平匡がその後一体どうなったのかというのは、当然僕らも見たいと考えていました。2人が夫婦として生活していく中で、様々なことを話し合う姿は、いろんな生き方のヒントになるようなテーマが描けるのではないかと、連続ドラマを終えた直後から、続編はイメージしていて。原作の漫画でみくりと平匡が親になっていく様が描かれ、あとはそれをどうドラマとして描いていこうかと、海野つなみ先生や脚本の野木亜紀子さんともご相談していたところ、みなさんもご存知の通り世の中が大きく変化した2020年がやって来ました。このタイミングにこそスペシャルドラマを届けていこうということになったんです。

――金子監督は、新春スペシャルの制作が決まったときはどのようなお気持ちでしたか?

金子文紀(以下、金子):「いつか」とずっと思っていて、4年経っちゃっていたので、「やっと来た」という感じですね。個人的にも大好きな作品で、連続ドラマを終えたときも達成感がすごくあったので。ようやくできるという喜びがありました。

――脚本を担当された野木亜紀子さんとは、どんなことをお話されたのでしょうか?

那須田:原作漫画でも描かれていた夫婦別姓や育児休暇取得、保活、分担家事……と、多くのご夫婦に結婚した先に起こりうる、様々な課題をちゃんとテーマにし、家族というものを『逃げ恥』らしく描いて行ければという話をしました。また、今回は2019年から2020年を舞台にして、今の日本の現状をちゃんと反映させてお話を作っていきましょう、と。

――監督としては、今回のテーマをどう感じられましたか?

金子:物語としては、連続ドラマの最終回から2年後として始まっているんですけれど、やっぱり年相応というか、以前と同じ“ムズキュン”ばかりもしていられないというか。どういうところにみくりらしさ、平匡らしさ、2人らしさ、『逃げ恥』らしさを出して描いていくのかというところに一番頭を使いました。2人が社会に対して持っている視点、問題意識を失うことなく、親になっていく姿をちゃんと描かないといけないなと。その結果、2人らしいやりとりにキュンがあるのかもしれないけれど。前のようなキュンとはまた違うものにはなっていると思います。

“家族として生きるとなったら、みくりと平匡はどうするの?”が見たい

――年相応というお話がありましたが、演出上意識されたことはありますか?

金子:現実と向き合って、それに対して自分なりの考えを持って生きるということを、きちんと描こうと意識しました。連続ドラマのときは、みくりも平匡もすべて自己責任の人だったんですよ。自分で決めたことが、他人に影響するっていうことはなかったから。何を言っても、どう生きても、すべては自分の責任。でも、結婚をして、家族となり、子どもが生まれるとなると、自分だけではない環境に変わっていく。住む環境も職場も変わるし、何より自分だけじゃなくて、家族として生きていかなくちゃいけないってなったとき、“さあ、みくりと平匡はどうするの?”と。家族になると自己責任じゃ片付かないめんどくさいことが出てくる。それって世間一般、世界人類、みんなが抱えているけれど、あの2人ならどうするんだろうっていうところを見せるのが、今回の『逃げ恥』かなと思っています。その先、生まれた子どもが受験、就職、そしてもしかしたら孫が生まれるかもしれないっていうところまで、人生が続くことに思いを馳せながら挑みました。

――新垣さん、星野さんとは役作りについて何かお話されましたか?

那須田:連続ドラマをやっていたので、それぞれのキャラクターなどはすでにご理解いただいていると思いましたので、その先の今日的なテーマを描く上で何をどういうふうに二人は語り合っていくかという点について、こちらのイメージしていることをお伝えしました。当然、そこからいろいろなアイデアが出てきますから、撮影の前はいつもそうしたやり取りをしていました。

――4年ぶりとなる撮影現場の様子はいかがでしたか?

那須田:キャストもスタッフも、再会できたのは嬉しい限りでしたが、やはり4年前とは違う場面もたくさんあることを感じました。いろいろなことに注意しながら撮影を進めなくてはいけないので。そういう意味では、みんな慎重にアプローチしていきましたが、やはり撮影が進むにつれて、絆というか、言わなくても通じ合うみたいなところがたくさんあるのを感じました。密にならない盛り上がり、気持ちの中での共有、心のハグのようなものが『逃げ恥』の現場にはあると感じました。キャストのみなさんも4年ぶりに同じキャラクターを演じるというのは、当然ご心配はあったと思います。でも、新垣さんと星野さんが今回最初に二人一緒に演じられるシーンの撮影をしたとき、物語の中でも大事なシーンでもありましたが、スッとその不安が解消されたように見えました。このスペシャルドラマの世界観におふたりが一気に入っていかれたのかなと感じた瞬間でした。

――撮影時、スタッフからも新垣さんに「みくりさんでした」という声が上がっていたとお聞きしました。

金子:新垣さんも星野さんもクランクインのときは、非常に緊張されていたんですよ。すごく表情も硬くなっていましたし、その緊張感がこちらにも伝わってきて、現場にいる全員が緊張している状態でした。なのに、最初に撮影したのが、結構ハイテンションの芝居でいかなければならないシーンで(笑)。心配しながらも、いざカメラを回してみたら、とっさの反応で出た表情がみくりと平匡だったんです。ファーッとその顔になっていくのを見て、“戻ったー!”と思いました。カットした瞬間、思わず2人に「(みくりと平匡に)戻ったよ!」と言いに駆け寄って。監督として、“これでいいんだ”っていうことを2人に伝えないといけないっていう使命感みたいなものに突き動かされた感じでした。あれは嬉しかったですね。すごく嬉しかった! ちょっと涙出そうになっちゃった。

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