『鬼滅の刃』『君の名は。』大ヒットの要因に ufotableと新海誠から探るアニメーションの“撮影”の重要性

撮影監督を兼任し続けた新海誠

 『君の名は。』の記録的ヒットにより一躍ヒットメイカーとしての地位を獲得した新海誠だが、この作品が多くの人を惹きつけたのは、テンポのよいストーリー展開や音楽、名だたるアニメーターによる見事な作画などと並び、背景を含む画面全体の煌びやかさも大きな理由だったはずだ。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 新海誠監督の作家性は、技術の面から紐解くと撮影へのこだわりと言える。新海監督は、自作の撮影監督をずっと自分で担当してきた。実際に本人も撮影への特別なこだわりを認めている。

「僕は、どうしても撮影に関しては自分でチェックしたいし、カットごとの色や光のディテールにもこだわりたいんですね」※6

 新海監督は、色と光のコントロールを撮影セクションで行うことで自身の映像の個性を際立たせている。『星を追う子ども』撮影チーフの李周美氏はこう証言している。

「新海監督の色使いはもっと自由自在なんです。背景美術の上に動画をのせて、その上にさらに光を足すという時、動画の色が明るいと光がのりづらくてうまく見えなかったりすることがあるんですが、『じゃあここは動画の色を落としましょう』と監督から言われ、私なりに色味を落として光をのせたものを監督にお渡ししました。ところが完成した映像を見てみると、さらにドンと落としていてかなり暗い色合いの絵になっていてびっくりしました。暗くなった分、光がものすごく美しく際立つんです。『ああ……新海監督がこのカットで一番見せたいものは、光だったんだ』ということが明確に分かる絵になっていました」※7

 新海映画の代名詞と言える雨の描写も撮影エフェクトに負う点が大きい。詳細な技術はここでが解説しないが、興味ある方はこちらのサイトなどを参照してほしい( 解説:「言の葉の庭」における雨の表現について)。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 新海監督は、大ヒット作『君の名は。』でも撮影にクレジットされており、自身でなんらか撮影の手を加えていると思われる。プロダクションの規模が拡大し、監督の作業量が増えた『天気の子』ではじめて撮影のクレジットから外れたが、『君の名は。』に参加した津田涼介氏を撮影監督に起用し、基本的に従来のテイストを引き継いでいる。

 2016年、映画界を驚かせ、多くの人を魅了した作品の美しさは、撮影のこだわりから生まれたのだ。

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