佐藤浩市×石田ゆり子×西島秀俊が語る、『サイレント・トーキョー』と日本映画界の現状

佐藤浩市×石田ゆり子×西島秀俊が語り合う

石田「とにかく“普通っぽさ”を意識していました」

ーー実際に撮影を経て、完成した作品を観ていかがでしたか?

西島:自分が考えていたよりも遥かに“ノンストップの99分”という感じでした。事件が起きてからラストまで、一気に突っ走っていく映画になったなと。それと、クリスマスイヴの爆発のシーンなど自分が関わっているシーンも、撮影の時点では正直どうなるかが全然分からなくて。完成した作品を観ると、実際は渋谷では撮っていないのに驚くぐらい渋谷だったので、すごく不思議な感覚でした。最終的に、自分のイメージとは全く違う映画になっているなと思いました。

石田:あのシーンはすごい撮影だったと噂には聞いていましたが、実際に完成した作品を観て、本当に大変だったんだなと思いました。出来上がって初めて全体像が分かるような作品でもあるので、私もほぼ観客目線で観ていました。

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ーー先ほど佐藤さんが「全ての登場人物の過去や背景をあえて省いている」とおっしゃいましたが、演じる立場として、そういった過去や背景が描かれないのは役作り的にどうなんでしょう?

佐藤:正直言って、描いてくれた方が僕らは楽なんです。それはそうですよね、語ってくれるわけだから。でも、今回はそういったものがあまり克明には描かれないかわりに、映画全体にいい意味での“ドライさ”が生まれたと思うんです。僕らが言うのはおこがましいんですが、観てくださる方がそういった心情的なものをうまく引っ張り出してくれたらうれしいですね。

西島:原作にはしっかりと過去のことが書いてありますしね。それと今回、準備稿の段階ではシーンとしても存在していました。僕らは当然それを撮るつもりで考えていたので、完成した作品の中には残っていませんが、イメージとしてはそれぞれの過去や背景、キャラクターの一貫性みたいなものは持ってやっていました。なので、もしかしたら観ている方からしたら「なんでだ?」と思うようなことがあるかもしれませんが、僕の中では全部しっかりと理由があった上で行動しているイメージでした。

石田:もちろん過去や背景などもあるのですが、私はとにかく“普通っぽさ”を意識していました。私はいつも完成したものを観ると、常に「ああすればよかった」すぐに思ってしまって反省することもあるんですが、今回はそれとは別に、自分が思っている感じとはまた違った見え方になっているのかなとも思いました。

ーー皆さんの共演シーンは終盤の2シーン程度だったと思いますが、西島さん、石田さんから見た主演の佐藤さんの現場でのあり方はどうでしたか?

西島:撮影に入る前にセリフの微妙なニュアンスを監督と丁寧に検証されていたのが印象的でした。あと、僕たち後輩をリラックスさせてくださったり、そのシーンに緊張感を持たせてくださったり、そういう演技だけではない部分、スタートする前段階の場の作り方などは、本当に勉強になりますという感じで。そういう姿をもっと見ていたいと思いましたし、今回は本当に共演シーンが少なかったので、次はもっとたくさん共演シーンがある作品でご一緒したいなと思いました(笑)。

石田:浩市さんはいつも全力でそのシーンそのシーンを深く突き詰められていて。私からしたら、その姿を見ていつも気が引き締まる思いです。「私もしっかりしなきゃ」といつも思わせてくださる存在ですね。

佐藤:いやいや、そんなことは……。

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