前田旺志郎は“普通の青年”をフラットに演じる逸材だ ドラマ『猫』にみる“若さと確かさ”

前田旺志郎の”若さと確かさ”

 また、山田杏奈×玉城ティナ主演の『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(MBS/TBS)では、潔癖かつ堅物なメガネ女子の文芸部部長・曾根崎り香(横田真悠)と交際するクラスメイト・広瀬を演じていた。

 実はメガネを外し、髪をおろすとモデル似の曾根崎の容姿を褒めたことから、ガチガチの彼女の価値観を揺るがし、交際に発展。恋する気持ちに浮かれつつも、周囲には公表してもらえず、悶々とする思春期男子ぶりは、どこのクラスにも一人はいそうな身近さを感じさせた。

 これら3本の連ドラを振り返ってみて感じるのは、彼がいま、他にライバルのいない位置に来ているのではないかということである。

 学生役といえば、少し前までの窪田正孝や菅田将暉、さらに現在まで続く本郷奏多、泉澤祐希、矢本悠馬など、腰が細い・あるいは小柄で達者な大人の役者が演じるか、そうでなければ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)出演者たちなど、売り出し中の旬のイケメン俳優たちが演じることが多かった。

 しかし、前田旺志郎はリアルに若くて確かな芝居ができて、「旬のイケメン俳優」たちとは一線を画した、そのまんま「ごく普通の青年」を演じられる。

 実はこの手の安定感ある「純朴かつ普通の青年」が演じられる若手俳優というのは、意外と少ない気がするのだ。少し前から、ベテランで巧すぎることために『アンナチュラル』(TBS系)、『コウノドリ』(TBS系)をはじめ、良作の単発ゲストとして悲しみを背負う役が多かったり、『浦安鉄筋家族』(テレビ東京系)で小学生を演じたり、戦争モノなどに多数出演したりと、一人であらゆる重責を背負わされ続けてきた泉澤祐希に続く若手の役者がいないかを、勝手に心配してきた。

 「普通の青年(学生)の普通の日常をフラットに演じられる役者」を心の中でずっと探していた。その答えが、意外にも突然現れた。前田旺志郎だ。昔から知っていたはずなのに、役者仕事もこれまでたくさんこなしていて、たくさんの作品で見ていたはずなのに。その可能性には全く気付いていなかった。

 おそらく今後、長きにわたって「普通の青年」「普通の学生役」を引き受けていくことになりそうな予感がする前田旺志郎。彼の活躍がもっともっと見たい。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
ドラマ25『猫』
テレビ東京、テレビ大阪ほかにて、毎週金曜深夜0:52~1:23放送
「ひかりTV」「Paravi」にて、毎放送1週間前から先行配信
出演:小西桜子、前田旺志郎
脚本:金井純一
監督:金井純一、松本花奈
音楽:D flat
主題歌:DISH//「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
プロデューサー:漆間宏一(テレビ東京)、加藤伸崇(SDP)、坪ノ内俊也(R・I・S Enterprise)
制作:テレビ東京、S・D・P
制作協力:R・I・S Enterprise
(c)「猫」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/cat/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_neko

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