『罪の声』が描いた“戦う女性たち”の姿 野木亜紀子の作家性を原作との相違点から紐解く

『罪の声』が描いた“戦う女性たち”の姿

 映画『罪の声』が上映中である。小栗旬、星野源という人気・実力共にある俳優2人が、それぞれ新聞記者、テーラーに扮し、昭和最大の未解決事件の謎を追うというだけでも興味をそそられる作品ではある。

 だがなにより、塩田武士の緻密な取材をもとに圧倒的な説得力で紡ぎだした傑作長編小説に、ドラマ『MIU404』(TBS系)、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)を手掛けた野木亜紀子の脚本という要素が加わることによって起こった変化が興味深かった。また、小栗演じる阿久津の上司役に松重豊と古舘寛治、星野演じる曽根の妻役に市川実日子、人のいい板前役に橋本じゅんと、主演の星野もそうだが、野木作品お馴染みのメンバーが多く登場するのも嬉しい。

 映画『罪の声』は、名もなき人々、社会から存在しないことにされてしまった人々に光を当てつつ、正反対の性質を持つ男性2人の絆を描いていた。これは、紛れもなく野木亜紀子の作家性を物語っていると同時に、塩田武士の小説『罪の声』の本質を見事に貫いていた。

 本作は、「キツネ目の男」と言えばだれもがピンとくるだろう食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件を題材にしている。劇場型犯罪としても類を見ない実在の事件の真相を追及していく、ミステリーとしての面白さがまずある。空白だらけだったホワイトボードに、まるでパズルのピースが埋まっていくかのように事実の断片が当てはめられていくさまは、松重と古舘演じる当時を知る記者たちじゃなくても、興奮せずにはいられない。もちろんこれはフィクションであり、1つの仮説なのであるが、塩田の緻密な取材によって裏打ちされたリアリティは、「本当にそうだったのかもしれない」と思わせる説得力がある。

 事件の35年後、平成の終わり、2人の男がそれぞれの理由で、この「ギン萬事件」の真相を探り始める。

 1人は、京都でテーラーを営む、星野演じる曽根俊也。彼はそれまで、妻子と共に穏やかな日々を送ってきたが、ある日、自分の幼い頃の声が、事件の時、身代金の受け渡しに使用した脅迫テープに利用されていたことを知る。一体誰が何のためにと調べていくうちに、事件に利用された、もう2人の「声」の主である少年少女の存在を知り、彼らを探し始める。

 もう1人は、既に時効となっている未解決事件を追う企画班のメンバーに選ばれたために、嫌々ながら事件を追い始める、小栗演じる阿久津英士である。

 全く違う場所で、違う人生を生きてきた彼らが、それぞれの視点から事件の裏側にあった真実の欠片を拾い集めた末に、互いを認識し、やがて邂逅し、行動を共にし始める時のワクワク感といったらない。



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