『35歳の少女』が描く相手の心に寄り添う大切さ 柴咲コウの“決断”を示していた『人形の家』

相手の心に寄り添うこと描く『35歳の少女』

 柴咲コウが主演を務めるドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)が11月7日に第5話を迎えた。

 第5話は、望美(柴咲コウ)の家出という衝撃の展開で幕を閉じる。苦くて飲めないコーヒーやスマホ、少女漫画に出てくるキスまで様々なことに興味を持ち、知りたいと話す望美に、結人(坂口健太郎)が差し出した本がヘンリック・イプセン『人形の家』。つらい体験をした後、誰にも頼らずに生きていく決心をする女性が自立する物語だ。劇中では望美が結人にキスを迫ろうとすることでサラッと流されるが、このアイテムが望美の決心を無意識に固め、ラストの結末を視聴者に示唆していた。

 第5話の縦軸となるテーマは、相手の話を聞いて気持ちを分かろうとしてあげること。それは多恵(鈴木保奈美)と進次(田中哲司)が結婚するきっかけにあったことでもあり、望美と結人を繋ぐ児童書『モモ』に書かれている教えでもある。

 望美が口々に言うのが「ごまかしてる」という言葉だ。「会いたい」「もう付き合ってる」「将来は結婚も考えてる」と脊髄反射の如く思ったことを口にする思春期真っ只中の望美は、不幸せそうに浮かばない顔の多恵も、夢を諦め代行業でその日を生きる結人のことも、“ごまかしている”と感じていた。しかし、人にはそれぞれ様々な事情がある。経済的なこと、家族のこと。人の心に土足でズケズケと上がり込むのではなく、まずは相手の心に寄り添いゆっくりと話を聞いてあげること。その大事なことに望美は気づく。

 結人は望美と共に2つの行きたい場所に向かう。1つ目が小学校の教師を辞める理由となった、自殺した生徒の墓参りだった。一人学力が劣っていたその生徒の影響から、クラスは次第に授業が進まなくなり、だんだんと浮く存在になっていった。「彼を救ってやれなかった」「本当はいじめがあるって分かってたくせに何もせずに逃げた」と自身を責める結人は、彼の話を聞いてあげられなかったことを悔やんでいた。過去から逃げ、自分をごまかして生きていたと認めた結人は、再び教師の道を志すことを墓前に誓う。

 代行業を辞め、望美との恋人代行もお終い。本格的な交際を認めてもらうために向かった先が、多恵の元だ。交際の申し出に多恵は、「選びなさい、ママかこの人か」と真っ向から反対の態度を示す。そこには「この先、何が起きようと一生離れない」「死ぬまでそばにいる」という25年もの間、自分を信じ、娘を育ててきた深い愛と自信があった。「嫌われようとも反対することが望美のためになる」という一言は、多恵の確固たる覚悟が強く表れている。

 そんな多恵に望美が言い放つのが、「ママとは違う」「周りの人を信じて生きていく。一生一人の人を愛して生きていく」という強烈な一言。誰にも頼ることなく25年間独りで生きてきた多恵。それは掛け替えのない望美のためであるが、その大事な娘に生き方を否定されたショックは計り知れない。自分のしでかした事の重大さからか、今にもその場に倒れこみそうな望美。晴れて愛する結人と一緒になることはできたが、その代償はあまりにも大きかった。

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