『あのコの夢を見たんです。』にみるテレ東深夜ドラマの歴史 妄想系モキュメンタリーの系譜を辿る

『あのコ~』にみる、テレ東深夜ドラマの歴史

 既存ドラマとの違いはキャスティングでも一貫している。今作の出演者で言えば、山里役の仲野太賀だろう。仲野のように役作りに定評があり、監督の信頼も厚い実力派に機会を提供してきたのがテレ東の深夜ドラマであり、『湯けむりスナイパー』の遠藤憲一や『孤独のグルメ』シリーズの松重豊は同枠を経て全国区になった。

 俳優だけではない。テレ東の深夜枠は新進監督や舞台出身の作家・演出家を積極的に登用してきた。現在放送中『共演NG』の演出を担当する大根仁とドラマ24の縁は深い。『湯けむりスナイパー』、『モテキ』をはじめ、『まほろ駅前番外地』、『リバースエッジ 大川端探偵社』には大根のこだわりが詰め込まれている。

 深夜枠ならではの自由度を生かした風通しの良さも特長で、実績のある監督に新しいチャレンジの場を提供してきた。『勇者ヨシヒコと導かれし七人』でミュージカル回を実現した福田雄一や『山田孝之の東京都北区赤羽』や『コタキ兄弟と四苦八苦』の山下敦弘、『バイプレイヤーズ』の松居大悟、『捨ててよ、安達さん。』の大九明子は代表格であり、多方面に反響を呼んできた。

 『あのコの夢を見たんです。』も4人の女性監督を起用している。前述の大九に加え、『セトウツミ』の瀬田なつき、映画界に新風を吹き込む枝優花と松本花奈だ。男性目線の原作の映像化は簡単ではないはずだが、それぞれ新鮮な解釈でヒロインの魅力を引き出している。

 注目アーティストの楽曲をタイアップでいち早く使用するなど、エッジーなものを志向するテレ東深夜ドラマの取り組みは頭一つ抜けている。『あのコの夢を見たんです。』を観ることは、同局が積み重ねてきたドラマ制作の歴史に触れることでもある。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
ドラマ24 第60弾特別企画『あのコの夢を見たんです。』
テレビ東京ほかにて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:12〜放送
原作:『山里亮太短編妄想小説集 あのコの夢を見たんです。』(東京ニュース通信社)
出演:仲野太賀、中条あやみ、芳根京子、森七菜、飯豊まりえ、大原櫻子、山本舞香、大友花恋、白石聖、鞘師里保、池田エライザ
監督:大九明子、瀬田なつき、枝優花、松本花奈
脚本:政池洋祐、マンボウやしろ、三浦希紗、野村有志
脚本監修:山里亮太(南海キャンディーズ)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:倉地雄大(テレビ東京)、和田圭介(スタジオブルー)、瀬島翔(スタジオブルー)
制作:テレビ東京、スタジオブルー
製作著作:「あのコの夢を見たんです。」製作委員会
(c)「あのコの夢を見たんです。」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/anoyume/
公式Twitter:@tx_anoyume
公式Instagram:@tx_anokonoyume

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